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文美(サイコダイバーシリーズ)
文成が自分に好意を持っているらしいと知った時、美空はさほど驚かなかった。 文成仙吉という男は、他者に情を抱きやすい性質なのだろう、と考えていた為である。一度や二…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
とっ散らかったベッドの上で、文成は目を覚ました。彼を覚醒させたのは、目を灼きそうなほどに強い陽射しだった。 文成は呻きながら身を起こした。ブラインドの隙間から射…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
空海の木乃伊を巡るあの騒動の末に知り合った彼らのことを、美空は時々思い出しては幸福な記憶に浸るように懐かしんでいた。 幸福と呼ぶには、穏やかとは言えない物事ばか…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「じゃあ、以前は青山のマンションに住んでいたんですね」 美空の言葉にそうだと頷いてみせる。二年前、おれは青山のマンションで一人暮らしをしていた。庶民には手の届か…
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さざ波のように揺らぐ
雨の降る、静かな夜のことだった。 窓の外からは、雨音がひそやかに聞こえていた。ワイナリーの中心に位置するディルック邸では、この天気のためにいつもより早く灯り…
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いつか忘れゆくはずだったもの
「美空さん、あたし、池袋のラウンジで働き始めたの」 あどけない女の声だった。ようやく20代に入ったかどうかという幼さを滲ませていた。留守電に入っていたその声に、…
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駆け引きにもならない問答
「おめえが女だったら良かったのにな」 おれは、ずいぶん前から思っていたことを美空に言ってやった。対面に座る美空は、ちらりとこちらに視線を向けた後、すぐに目を伏せ…
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愛すべき珍獣または隣人として
その日、東京では珍しい大雪が降った。 コンクリートは白く染まり、それだけでなく屋根や看板や車の上にも雪がやわらかく積もっていった。テレビのニュースでは、電車やバ…
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近くて遠い場所にある
『お昼 いっしょに食べませんか』 平日の昼間、突然送られてきたそのメッセージをもう三度は読み直した。オフィスの自席で、大きく息をつきながら椅子の背もたれに身を…
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飼育という名の愛情表現について
フィガロって、俺を飼育したいと思ってるんですか? そんな風に問われたことをフィガロは不意に思い出した。それが見当違いな指摘なのか、それともその通りなのか。自…