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たぶん一生、
まさかこの自分が、遊園地でデートをすることになるとは思ってもいなかった。自分の性格だとか年齢だとか、それらを全部ひっくるめてそういうものが似合わない男だと自覚…
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入水
明日は久しぶりの休みだから、とトーマを寝所に招き入れた。静かな夜だった。トーマは望む通りのことをしてくれた。着物の合わせ目から潜り込んで、少しずつ体を暴いてい…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「ところでよ」 「はい」 「本当の名前は、いつ教えてもらえるんだい」 その言葉に、美空は心持ち首を傾げてみせた。そして、隣に座る男へ視線を向ける。きっちりと折り…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「やい、美空」 突然そう声をかけられても、美空は驚かなかった。その声の持ち主が毒島であることも、その毒島が背後にいたことにも、彼はずっと前から気がついていたのだ…
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人殺したちのたわむれ
初夏の心地よい日だった。日差しは暖かいのに、風はちょうどいい塩梅で冷えている。温まった体の隙間を、ひんやりとした風が吹き抜けていくのはひどく気持ちが良かった。 …
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壊れたままでも
夜遅くなっても賢者様が部屋に来ないので、こちらから迎えにいくことにした。特別時間を決めて待ち合わせしているわけではないけれど、それでもだいたい同じ時間に賢者様は…
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取るに足らない寓話
僕のおうちは、他のみんなよりも少し遠いところにあるから、いつも帰り道の途中でお友達とお別れする。何度も振り返ってはバイバイして、お友達が豆粒みたいな大きさになっ…
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化けの皮
分厚い雲に覆われた薄暗いある日のこと、「魔物を退治して欲しい」という依頼のために南の国へやって来た賢者は、森の出入り口付近を一人でぶらついていた。魔物が住んでい…
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しかくがいっぱい
ミスラは賢者に手渡された紙を、ひどく奇妙なものを見るようにしげしげと眺めた。その様子を見て、賢者はやや気恥ずかしさを覚える。ミスラが手にしている紙には、ある単語…
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麻痺したような心中で
桜吹雪とは、こういった景色を指すのだろうか。 三月の透き通った青空の下、人気の無い校庭を歩きながら晶はそう思った。桜の花びらが風に吹かれて舞い上がり、校庭の隅々…