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みんなあたまがおかしいそうです(1/4)
内履きの下で、ざり、と何かが擦れ合う音がした。床一面に広がっている、砂埃のせいだろう。快いとは言えない感触だった。胸がざわめく。砂埃のせいではなく、これから起…
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遺書代わりの小説1
あかねちゃんのことを、書こうと思う。できるだけ鮮明に、小学四年生の頃まで記憶を辿って、まるで小説を書くようにして。 小説とは言うものの、これはほとんど遺書と…
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血肉と香水
「いい匂いがする」 ドクターのその言葉が、シルバーアッシュの視線を捉えた。微笑を含んだ瞳だった。 明らかにオーダーメイドだと分かるスーツ越しに、花や果物とは…
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どうもこうもない(※R18)
「でも、セックスはしばらくできないよ」 シルバーアッシュがドクターと恋人同士になって、まず最初に告げられたのがそれだった。 恋人になる。その言葉に含まれる甘…
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今はそんなに楽しくないね(※R18)
その日は雨が降っていた。雨の勢いは穏やかで、耳を澄ましてもさざなみのような音がするばかりだった。午後五時半。帰りの電車は息苦しいくらい混んでいた。 その時、…
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思慮分別のない獣が二匹(※R18)
「汚れちゃわない?」 ドクターの言葉に、改めて自分の格好を見下ろす。コートを脱いだだけで、あとは普段と変わらない服装だ。それに反して、目の前の彼は防護服も下着…
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喪服
つい先日、稲妻で有名な反物屋の主人が亡くなった。 まだ中年と呼んでもいい歳だったので、死ぬには早過ぎるほどだったが、普段の酒浸りの不摂生を知っている者からす…
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銀糸
※モブ若のような描写があります 日が落ちて、段々と周囲が薄青く染まっていく時間帯。 ぽつぽつと酒場の明かりが目立ち始めたのを見て、今日はどこで飲もうかと考え…
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庭園
紫陽花の咲く庭園を、彼と散策した日のことを覚えている。 いかにも梅雨時らしい天気だった。雨こそ降っていなかったものの、湿度が高く、服の内側で肌がじんわりと蒸…
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勘違いしてしまうから(※R18)
甘酸っぱい汗の匂いが、寝所の中に充満している。 情事の後、こんな風にしてトーマに抱かれて眠るのを綾人は好んでいた。普段は公務で忙しく、顔も合わせない日々が続…