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遺書代わりの小説2
「Aちゃん、音読してるときいっつもふらふらしてる」 あかねちゃんがそう言っていたのをよく覚えている。 国語の時間に行われる「音読」が、私には憂鬱で仕方がなか…
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残酷で自分勝手な子供みたいに
ここにいる魔法使いのほとんどは、賢者様を子供だと思っているだろう。 そりゃ数百年以上生きていれば、二十数年という時間は瞬きするのと同じくらい短く感じるだろうけど…
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何がどんな風に変わっていただろう
俺が賢者様に聞いてみたいことは、数え切れないほどにある。 「俺のことをどう思ってますか」「俺に触れたいと思ったことはありますか」「俺のことが好きですか」「俺のい…
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倫理形成
あたたかい春の昼下がり、俺はフォルモーント・ラボラトリーの外玄関にしゃがみ込んで、野良猫達と戯れていた。 フィガロの善意によってこのラボで働けるようになった俺は…
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ホログラムの海を泳ぐ
夜の八時、俺はフォルモーント・ラボラトリーのホールに座り込んで、カインが来るのを待っていた。 あの衝撃的な一日からしばらく経った今現在、俺はこのラボの一職員とし…
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寝顔
穏やかな朝だった。朝の日差しに満ち溢れた廊下に立って、俺は賢者様を起こそうと、扉越しに声をかけていた。 何度か呼びかけてみたものの、壁一枚隔てた部屋の中からは物…
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ゆりかご
フィガロには、幼少期から何度も繰り返し見ている夢がある。おそろしく巨大なものが、こちらへ押し寄せてくる夢だ。 夢の中で、フィガロは子供の頃の姿をしている。ミチル…
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みんなあたまがおかしいようです(4/4)
「へえ。校長室ってこうなってるんですね。あれ、あの金ピカの球みたいなやつはなんですか? サッカー部が県大会まで行った時のもの? 強いんですねうちの高校。初めて知…
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みんなあたまがおかしいようです(3/4)
私は言い訳を考えようとしている時の癖で──周囲のものをぼんやりと捉えようとした。 教室の壁に備え付けられた、放送用のスピーカー。ぷつぷつと穴が開いていて、そ…
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みんなあたまがおかしいようです(2/4)
「話を戻しますけど」 私はそう言った。本当は戻したくなんてなかったけど、そうでもしないとこのお喋りがいつまでも終わりそうになかったから。 そもそもとして、彼…