魔法使いの約束
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光の当たるところにいてね
夏が近いせいだろうか。ずいぶんと日差しの強い日だった。 日陰とそうでない場所の明暗がはっきりとしていて、そのコントラストに頭がくらくらしそうになる。気分転換に…
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フィガ晶♂(魔法使いの約束)
「どうしてこの仕事に就こうと思ったんですか?」 それを聞いて、向かいに座っていたフィガロが、不思議そうに目を瞬かせた。晶は言葉が足りなかっただろうかと思い「ただ…
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フィガ晶♂(魔法使いの約束)
「ここが賢者様の家?」 そんな声と共に、少しも汚れていない靴下を履いた足先が、ふわりとフローリングに降り立つのを晶は見ていた。あっちの世界に居た時と同じように、…
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フィガ晶♂(魔法使いの約束)
この人の核に触れることができた、と晶が思えた瞬間が一度だけあった。 それはサークルの新入生歓迎会でのことだ。晶の通っている大学近くには大きな公園があり、時期も…
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ミス晶♂(魔法使いの約束)
「治してください」 その声と共に、突然室内に現れた扉を見ても、フィガロは特別驚かなかった。その扉から現れたミスラと、ミスラの手に抱えられた見覚えの無い男を見ても…
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答え合わせはお茶会のあと
「昔、付き合ってた人がいたんですよ」 お茶会の席で、ミスラの口から唐突に語られたその言葉に、賢者は一瞬固まってしまった。口元に運んでいる途中のティーカップが、中…
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獣の性欲
することもないので、ミスラは退屈凌ぎに中央の市場へと足を伸ばした。ここは北の国と違って、いつ来ても人と出店で賑わっている。人生のほとんどを北の国で過ごしてきたミ…
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微熱の波の中で
意識を取り戻した時、賢者がまず知覚したのは、自分の体の形だった。頭のてっぺんから手足の先に至るまで、体の全てが熱を帯びて茹っている。 いつもなら、ベッドの中に横…
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2と1のろうそく
深夜二時。 家族に気づかれないよう、家を出るのに苦労した。 玄関の扉を閉めた瞬間、軋んだ音が僅かに響いて、両親が起きだしやしないかとしばらく扉の前でビクビクして…
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壊れたままでも
夜遅くなっても賢者様が部屋に来ないので、こちらから迎えにいくことにした。特別時間を決めて待ち合わせしているわけではないけれど、それでもだいたい同じ時間に賢者様は…