一次創作
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この部屋には何もない6
弟は嘘の思い出話を作り上げるのが得意だった。全く自然な口ぶりで、あったわけもないことを話し、時々私もそれに騙されそうになった。 例えば、「子供の頃の俺は全然も…
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この部屋には何もない5
珍しく、弟がカードゲームに誘ってきた。弟が選んだのは神経衰弱だった。私が割と好きなゲームだ。チェスやらオセロのような、頭を使う遊びは好きじゃない。半分くらいは…
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この部屋には何もない4
私は気が利かない性格をしているうえに、他人よりぼんやりしているので、将来職を得ることができるのだろうかと母親だけでなく私自身も心配していた。しかし絵の才能に恵…
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この部屋には何もない3
私は生まれた時からずっとまっすぐな髪をしていた。大人になった今は、さすがに幾らかの傷みが毛先に出ているけれども、以前は櫛で髪をとかしている時にひっかかるなんて…
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この部屋には何もない2
弟は学校をサボりがちで、登校している日の方が少ないくらいだった。堂々と朝から家に居座っている日もあれば、制服を着てちゃんと登校したのかと思わせてそこらをぶらつ…
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この部屋には何もない1
「姉さまは自分の顔の良さに甘えてるよね」 ある日弟がそう言ってきた。「世の中には太る自由さえない顔をしているのがいっぱい居るんだよ。ちょっと顔に肉がついただけで…
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遺書代わりの小説10
その日、あかねちゃんは登校してすぐにランドセルを置く間もなく私の席へ突撃して(ミサイルのような勢いだった)、興奮しきった様子で昨晩見た映画のことについて聞かせ…
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SS(砂城あかね)
少し時間が飛ぶ。私が大学を卒業して、管理栄養士として働いていた時のことだ。 私は地元を離れて、他県のO市に移り住んでいた。新卒で入社した企業は、割と大きめの介…
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遺書代わりの小説9
女児というものが大抵そうであるように、私もまた文房具や雑貨などのこまごまとしたものを愛していた。特に好きなのが消しゴムだった。色つきのものや香りつきのもの、動…
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遺書代わりの小説8
はじめてあかねちゃんと話した日のことを書こうと思う。 私が三年生の時の真夏日だった。 その日は、母親の友人が朝から家を訪ねてきていた。二人は居間のテーブル…