アークナイツ
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遺書
「私はね、いろんなオペレーターと友達でいるけれど、特に君とは近しい仲にあると思うんだ」 テーブルを挟んで向かい合うようにして、ドクターとシルバーアッシュがソフ…
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ホットケーキミックスと腐食死体
「責務から逃れたいと思ったことはあるか」 シルバーアッシュからすると、それはほとんどプロポーズ同然の言葉であったのだが、ドクターは眉一つ動かさず「ない」と答え…
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酩酊
ある地方都市の、その寂れた酒場にドクターが現れたのは、ちょっとした偶然によるものだった。 ドクターが店に入った瞬間、客たちは気だるげにその姿を一瞥した。しか…
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私じゃ役に立てないね
吐く息が白い。もう春先だというのに雪が降っている。ドクターは手を擦り合わせた。積もるほどには降っていない。ほんの少しの熱と風で、かき消えてしまいそうなほどにか…
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いつか、もしくは50年後に
乾いて淀んだ空気が、寝室の中に充満していた。朝ではあるものの、朝陽が室内に差し込んでくることはない。窓の外にあるのは、横殴りの吹雪ばかりだからだ。 ベッドで…
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薔薇とチョコレートケーキ
ドクターは、真向いに座る男を眺めていた。 昼間のテラス席。白い、アンティーク調のテーブルと椅子。石棺の中で目を覚ましてから、少なくとも十年の月日が流れていた…
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醜悪
シルバーアッシュは今日の昼前にようやく、カランドが所持している地方の支店に着いたところだった。普段は重役用の応接室として使われているらしい部屋で身を休める。午…
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聞き分けのない子供
申し訳ないけど、と口にした瞬間、目の前のオペレーターはあからさまに肩を落としていた。 悪いことをしたな、と思った。ついさっきまでの、緊張でこわばっていた彼の…
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口紅と小鳥
きっとこのくらいが丁度いい。ロドスを離れるたびに、シルバーアッシュは自身にそう言い聞かせていた。好んだ相手と四六時中いっしょにいたら身が持たない。一ヶ月に何度…
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血肉と香水
「いい匂いがする」 ドクターのその言葉が、シルバーアッシュの視線を捉えた。微笑を含んだ瞳だった。 明らかにオーダーメイドだと分かるスーツ越しに、花や果物とは…