団長の彼女さんって、どんな人なんだろうな。鍛錬の休憩中、隣にいる同僚へそう尋ねると「彼女じゃなくて、彼氏な」と訂正される。
彼氏、彼氏かあ。なんとなく、肩透かしを食らったような気分になった。別に悪いわけじゃないけれど、団長の隣にいるのは、お姫様のように愛らしい、健気で可憐な女性なのだろうと勝手に期待していた。ゆるく波打つ長い髪に、真っ白い肌に、折れそうに細い首筋をした、守ってあげたくなるような女の子。おとぎ話の中で騎士と結ばれる相手というのは、大抵そういう女性じゃないだろうか。
そこまで言うと、「でも、彼氏さんもそういうタイプだよ。守ってあげたくなる系の」と返された。なんだ、もう会ったことがあるのか。そう聞くと「二、三回だけ」と返される。それを聞いて、こいつの交流関係の広さを思い知らされた。愛想が無いし、あまり笑いもしないこの同僚は、不思議と周囲に好かれている。それに対して、自分はどうだろう。
体格の良さだけを当てにして騎士団に入った俺は、正直あまり馴染めていなかった。気のいい奴らばかりだから、除け者にされるようなことはないけれど、それが余計に、俺を惨めにさせるのだ。中央の気質自体が、俺には合っていないのかもしれない。数年後には、東あたりにでも移住して転職しようかな、と考えている。その場合、騎士団に長く勤めていたというのは、大きなアドバンテージになるだろう。そんな考えがあって、ずるずると惰性でここに居座っている。
そんな風に考えていると、いつのまにか隣にいた同僚が、団長のもとへと向かっていた。何人かの騎士に囲まれて、談笑しながら剣の手入れをしている。
「団長、今度時間が合った時でいいので、彼氏さんと一緒に食事できませんか」
俺は口から心臓が飛び出そうになった。
「こいつがね、会ってみたいって言ってるんですよ」
そう言って同僚が俺を指さしてくる。ずけずけとものを言うこいつが、俺よりも人に好かれている理由が理解できなかった。
「いいけど、惚れるなよ」
俺の方を見ながら、にやりと笑って団長が言う。団長は、陰気な俺に対しても他と変わらずに接してくれている。ここで働いていく中での、救いの一つだった。もごもごと曖昧な返事をしながら、この人にここまで言わせるなんて、どんな人なんだろうと興味がそそられる。団長の方から熱心にアプローチして、ようやくくっついたのだということは知っていた。騎士という言葉を体現したような彼に、そこまで惚れられるとはどういう男なのだろう。どれだけ想像を巡らせてみても、俺の小さい脳みそではその姿を思い描くことすらできそうになかった。
その日はすぐにやって来た。
勤務終わりに、騎士団近くのレストランへと行く。団長の彼氏さんは、お友達の魔法使いに送ってもらって団長と合流するらしい。
情けない話だが、俺一人じゃ場が持ちそうにないと言って、あの同僚に着いてきてもらった。先に店に入って二人が来るのを待つ。おしぼりをもてあそんで暇を潰していた同僚が、ふと首を伸ばして「来たよ」と店の出入り口を顎で指し示した。慌てて椅子から立ち上がる。エスコートされながら姿を現したのは、団長より背の低い、優しげな顔をした男だった。男は俺に気がつくと、ふわりと微笑んで向こうから声をかけてくる。
「こんばんは、はじめまして」
「……はじめまして」
耳にすっと馴染むような声だった。砂に吸い込まれていった水が、そのまま地面の一部になっていくような、奇妙な安堵を覚える。握手の後に、まさきあきらです、と自己紹介された。
「今日はありがとうございます。俺、カインの職場の人に誘ってもらえるなんて初めてで、すごく楽しみにしてたんですよ」
「いえ、全然」
謙遜するつもりでそう答えて、なんだか変な返しになってしまったな、と思って慌てて付け加える。
「きっと俺以外にも、晶さんに会ってみたいって奴がいっぱいいますよ」
「ほんとですか? そうだったらいいなあ」
そう答えた彼の、どこか無防備な笑顔を見て、なんだか胸が救われる心地がした。こういうところを、団長は好きになったのだろうか。
たしかに可愛い顔をしている。整った顔立ちだ。けれど、人混みの中で明らかに人目を引く顔かと言われたら、どうだろう。そこだけ見ると、団長には遠く及ばない造形をしていた。ただ、守ってあげたくなるタイプであるのは確かだった。団長に椅子を引いてもらって、そこに腰かける彼の仕草をついこまやかに観察する。緊張とは別の理由で、胸が高鳴るのを感じた。
団長、彼氏さんの顔を見てばかりだな。メニューを見るふりをしながら、こっそりとその様子を窺う。たとえばお冷を渡すときも、一緒にメニューを見ている今も、彼の視線は恋人の顔に釘付けになっていた。愛しい相手が浮かべる表情や仕草を、一分一秒も見逃したくないとでも言うように。
「上から茄子とベーコンのトマトソース、野菜のボロネーゼ、モッツァレラの……」
団長が不意に、メニューを指さしながら読み上げ始めた。それを彼氏さんが手の甲をつついていたずらっぽく目配せする。団長は頬をかきながら「ごめんごめん」と返した。その光景を不思議に思っていると、こちらの視線に気づいた彼氏さんが俺に言った。
「俺、あんまり文字を読めないんです」
「え」
驚いて声を上げる。
「今はもう、難しい言い回しでなければ読めるんですけども、数年前までは、こうやってカインがメニューを全部読み上げてくれたんです」
優しいですよね、と同意を求めて俺に笑いかけてくる。それに曖昧な笑みを返しながら、動揺を隠せずにいた。文字を読めない。それ自体は珍しいことではない。俺たちの祖父母の世代から識字率が上がり始めたというし、今でも肉体労働者は、自分の名前と簡単な数字の綴りしか分からない者も居るという。けれど、目の前のこの人がそうだと言われると、違和感があった。だって、品のある仕草や、落ち着きのある振る舞いには、中流以上の家庭で育った上品さがある。今だって、テーブルの上でゆるく組み合わせた手や、すっと伸びた背筋に、育ちの良さが感じられた。思わずそうやってこまごまと仕草を観察していると、正面から彼と目が合う。黒い瞳。あまり見かけない色だ。暗い色をしているはずなのに、水晶のように多量の光を含んだそれは、今まで見たどんな瞳よりも明るく澄んでいるように見えた。
その瞳が、何気なく逸らされて、またメニューへと向き直る。それがひどく悔しかった。なにが、とは説明できないけど。
顔を寄せ合って料理を選んでいる間も、やはり団長は恋人の顔をずっと見つめていた。そして彼氏さんの方も、メニューから顔を上げた時、必ず目が合うことに驚いている様子もない。見られていることに慣れている、とでも言うのだろうか。愛されることに慣れた生き物を、側で観察しているような気持ちになった。
料理が届くまでの間にお喋りをする。さっきまでと違い、正面から彼氏さんと向かい合うタイミングが多くなった。団長には遠く及ばない顔だ、とついさっきまで思っていた。その気持ちは今も変わっていないつもりでいたのだが、こうやって話したり笑っている姿を見ると、その印象が塗り替えられていくのを感じる。
可愛いな、と純粋に思った。女の子を前にした時に感じる愛らしさとは別だ。無防備な笑顔に、心がくすぐられていくのが分かる。この人は俺に対して、リラックスした姿を見せてくれてるんだな、と伝わってくるのだ。お腹をさらけ出して寝ている子犬に対して、誰もが悪感情を抱かないのと同じものがそこにあった。
「じゃあ、栄光の街出身なんですね」
「はい。それでも端の端にある、本当に田舎の方なんですけど……」
「でも、やっぱり都会の方だと思いますよ、ね、カイン」
会話は自然と、俺についてのことになった。彼氏さんはその合間に、こうやって団長に話を振っていた。それに団長は微笑みながら「うん」と返す。恋人を愛おしいと思っているのが、その一言だけで伝わってきた。普段騎士団で過ごしている時の、饒舌な姿とは全く違う。言葉少ななのに、そこに込められた感情が、いつも以上にありありと伝わってきた。長続きするカップルとは、こういうものなのかもしれない。
彼氏さんは、びっくりするほど聞き上手だった。こちらの言葉ひとつひとつを、丁寧に拾い上げてくれる。おかげで俺は、自分が話し上手であるかのように錯覚することができた。
「実家が農家なんです。俺はその中でも、特に体格が良くて、そんなに力があるなら騎士団に入ってみたらどうかって」
田舎で農家をやるより、騎士団にいる方が給料はずっと良い。実家に仕送りする分を差し引いても、十分に蓄えができるほどなのだ。
「実家では何を作ってたんですか?」
「ヌガー芋です」
「ヌガー芋!」
彼が声を上げる。大き過ぎない、けれど感嘆がこもっているとちゃんと伝わる声で。
「俺、甘いものが好きで、特にヌガー芋は、料理にもお菓子作りにも使えるから」
「分かります」
なぜだか、自分のことを褒められてるかのように嬉しくなった。
「じゃあ、普段から料理をよくされるんですか?」
「はい」
「いいなあ。俺も食べてみたいです」
そんな言葉がするりと出たことに、自分のことながら驚いた。初対面の相手に対して、どうしてこんなにも気安く願望を口にできたのか、不思議だった。彼氏さんは少し驚いた後、すぐに笑顔を浮かべて「じゃあ、今度差し入れしますよ。時々カインにお弁当を持たせてるから、それを多めに作って」と言った。
自分の顔に、自然な笑顔が浮かんでいることに気がついた。彼との会話が楽しかったのだ。もちろん、彼がこちらを気遣って、明るく言葉を返してくれてるのだろうとは分かっていたけれど、それとは別の、例えば「こんにちは」と言ったら「こんにちは」と返してもらえるような、他者とお喋りすることの根源的な楽しさを、久々に思い出せたように思えた。
不意に、指先に何かが当たる。見ると、それは隣に座っている同僚の手で、偶然触れたのではなく明らかに俺の気を引こうとしてのものだった。真顔でこちらを見つめている。なに? と視線だけで返すと、滅多に表情を変えない彼が、わずかに眉をひそめて言った。
「話しすぎ」
我に返り、団長の方を見る。彼は、不気味なほどに何の表情も浮かんでいない顔で、ただ俺を見ていた。不愉快そうにするわけでも、苛立ちを見せるわけでもなく。今まで生きてきた中で、これ以上ないほどに肝が冷えていくのを感じた。
「二人の世界に入っちゃってるじゃん」
続けて同僚がそう言ったので、俺は恥じ入った。いつの間にか、彼氏さんと俺の、二人だけで長々と話していた。視界の隅で、その彼氏さんも気恥ずかしそうに肩をすくめている。
「すみません。楽しくなっちゃって」
「そうだぞ。晶は俺の恋人なんだから」
団長のその声に茶化すような響きが含まれていて、俺はほっとした。今この場でクビを言い渡されてもおかしくないんじゃないかと思うほどに、冷たい目をしていたから。
そのタイミングで、料理が運ばれてきた。場の空気がそっちに持ってかれたので、ありがたいと思いながら食べ始める。さっきのことがあるせいか、食事しながらの会話には彼氏さんはあまり加わってこなかった。だからといって、楽しんでいないわけでもなく、行儀よく料理を口に運びながら、俺たちの雑談を聞いて声を上げずに小さく笑っていた。肩を少し揺らして笑う彼の、伏せたまつ毛の微細な動きに、目が吸い寄せられる。フォークでパスタを巻き取って、丁寧に口に入れていく姿。
食事は、あっという間に終わってしまった。帰りは団長がほうきに乗せていった。宙に浮かぶ直前、彼氏さんは俺たちを振り返って手を振ってくれた。「また、機会があれば」と言って。空に飛んでいったあとも、もしかしたら何度か俺たちを振り返ってくれたのかもしれない。けれど、背後から抱きしめるように寄り添っている団長の広い背中に遮られて、すぐにその姿は見れなくなった。
「俺に感謝しろよ」
帰り道、同僚にそう言われて「うん」と返す。歩きながら、同僚が小石を爪先で蹴るのを横で眺める。
「まさきあきらさんだっけ」
「うん」
「あきら、あきらさんかあ」
舌の上でその名前を転がす。
「また会えたらいいなあ」
そう言うと、同僚は怪訝そうに俺を見た。
「入れ込むなよ」
「そんなんじゃないよ、ただ」
ただ、ただ、ただ……ただ、時々会ってお喋りをして、彼の日常を教えてもらったり、逆に俺の毎日を知ってもらって、共感してもらったり、励ましてもらったりしたいだけだ。ちょうど今日、話しているだけで元気をもらえたみたいに。
「ただ、友達になりたいだけだよ」
そう伝えると、同僚は気持ち悪いものを見るような目で俺を見ていた。
あれから一か月が経とうとしていた。彼氏さんの姿はそれ以来見かけていない。当たり前だろう。俺はあの時まで、顔さえ知らなかったんだから。けれど、団長のために忘れ物を届けに来るとか、少し顔を出しに来たとかで、騎士団を訪ねてきたりしないだろうか、と内心そわそわしていた。
そうしているうちに、俺から誘えばいいんだ、とようやく思い至る。同僚が食事の約束を取り付けたのと同じようにすればいい。思いついた途端にそれしか考えられなくなって、先走った脳が色んなことを妄想し始める。今度は手土産に、実家から送られたヌガー芋を持っていこうかな。いや、それだとあざとすぎるか。雑貨屋で買えるような、小分けにされたティーバッグもいいかもしれない。持ち帰るには軽くて都合がいいだろう。受け取ったら、きっと嬉しそうにしてくれるはずだ。家に持ち帰ってお茶を淹れる時も、俺のことを思い出してくれるかもしれない。
一人でワクワクしながら、団長が一人になったタイミングを見計らって声をかける。
「なんだ?」
そう言って振り返った彼の、眩いばかりの美形さに、何故だか心が陰るのを感じた。以前なら、そんなことは思わなかった。むしろ、騎士団長たる彼の、完璧さを構成する一面のようでむしろ誇らしくさえあったのに。
「あの、また晶さんや団長と一緒に、食事したいなと思ってて」
「食事?」
「前は、ご馳走してもらったので。今度は俺が奢りたいんです」
そう言うと、親しみのこもった仕草で俺の胸を小突きながら「生意気だぞ、お前」と団長が笑う。よかった。俺との食事を迷惑がっているようには見えない。そう安堵していると、不意に団長が普段よりワントーン低い声で尋ねた。
「なんで?」
「え?」
「なんで晶なんだ?」
「あ、」
「晶も一緒に行く理由があるのか?」
「それは、」
だって、前も同席していたんだから、また誘うのは当然でしょうとか、団長に奢ってもらったんだから、晶さんの財布から半分出させたようなものでは、とかモゴモゴと理由を挙げていく。しかしそのどれもが、理由として不十分に思えた。俺の態度が、明らかに不審すぎるせいだ。目を泳がせて、自信なさげな声で言い訳を述べているのが自分でも分かる。
団長がまた、俺の胸に拳を押し当ててきた。さっきの勢いをつけたものとは違う。音もなく押しつけられた拳が、徐々に体へ沈み込んでくる。胸が苦しい。けれど、それ以上に俺の呼吸を浅くしたのは、間近で覗き込んでくる、団長の瞳だった。物言わず俺を探ろうとする、金色の瞳。その拳が離された時、ようやくまともに息を吸えるようになった。反射的に涙が出てしまいそうなくらいに。
「晶には、伝えておくよ。あんたが会いたがってるって」
そう言って団長は前に向き直り、その場を去っていった。顔を見るのが怖くて、どんな表情を浮かべていたのか、俺には分からない。肌にぬめりを感じ、顔を拭う。気づかないうちに、かなりの汗をかいていた。転職、という言葉が頭に浮かぶ。実家に帰ってもいいかもしれない。
「じゃあ、今度差し入れしますよ。時々カインにお弁当を持たせてるから、それを多めに作って」
彼の嬉しそうなその声が、不意に思い出された。それに縋りつかなければ、立っていられないという風に。
* * *
魔法舎に帰ると、晶が俺の部屋で待ち構えていた。おかえりなさいと言って、俺の着替えを手伝ってくれる。恋人になってから、こうやって相手の帰りを部屋で待つことが多くなった。「新婚ごっこ」だと晶は言う。可愛らしい発想だ。もちろん、俺が晶の帰りを迎えられるときは、俺が晶のジャケットを脱がせてあげたり、ハンガーにかけてクローゼットにしまってあげたりしている。衣擦れの音が部屋に響く。ふたりとも無言だったが、お互いがすぐそばにいる証が、静かな部屋に響いている。それがどうしようもないほどに愛おしく思えた。
こうしていると、つい晶と二人きりで一軒家に住む妄想をしてしまう。中央に家を買って、晶とふたりで住んで、俺たちだけのために作られた巣を徐々に整えていくのだ。屋根の色も壁の色も、晶の好きなものにしてあげたい。花壇には花を植えてもいい。晶が一生ここにいたいと思える場所を作ってあげたかった。けど、どれだけ鍵をかけて厳重な警備を敷いたって、誰かに拐われてるんじゃないかと心配になって、一時間ごとに様子を見に行ってしまうかもしれない。そう思うと、俺以外の魔法使いが見守ってくれる今の方が、良いのかもしれないと思った。
「今日、晶にまた会いたいって部下に言われたよ」
「誰ですか?」
「ほら、一緒に飯を食べた……」
そう言うと、晶は「ああ、……さん」と頷いた。
「名前、覚えてるんだな」
自分でも思いがけず、低い声が出た。晶はふっと笑って「もう、なんで怒るんですか」と言った。
「怒ってない」
「怒った顔してますよ」
頬を指先でつつかれる。たしなめるようなその仕草に、興奮で頭がぼーっとしてくる。褒められるのも、叱られるのも、晶が相手なら、いくらでもされたかった。
「みんなが晶を好きになるんだろうな」
夢を見ているような心地で、そう口走る。
「この世界には二種類の人間が居てさ、晶を好きな奴と、まだ晶を好きになってない奴に分けられるんだよ」
「カイン、酔ってるんですか?」
そう言って笑いながら、俺の唇や頬に指を添えて体温を確かめる。ひんやりした指だ。「平熱」と残念そうにつぶやく声。
「晶」
「はい?」
「いつか、家を買って、二人でそこに住もうな」
「うーん」
気のない返事に、少なからず傷つく。夢のような結婚生活を思い描いているのは、俺だけなのだろうか。晶は愛くるしい仕草で首を傾げて、俺の顔を見ながら続けた。
「カイン、俺のことが好きすぎて、本当にふたりっきりになったら、とんでもないことをしでかしそうなんですもん」
「……」
ぐうの音も出ない。
「もう少し、俺のことを放っておけるくらいになったら、二人で住みませんか」
「何百年後になるんだ、それ」
晶は笑って、じゃあ、何百年後にしてください、と言う。あまりの愛おしさにたまらなくなって、目の前の可愛らしい恋人を抱きしめる。俺以外の、誰の物にもしたくなかった。もし、誰かに奪われるようなことがあったら、その時はいよいよ俺の頭がおかしくなってしまうのだろう。もう、十分おかしくなっているのかもしれないけれど。