毒美
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まだ愛ではないけれど
「おれのペニスが、馬鹿になっちまった」 ベッドの上に仰向けに寝転んだまま、おれはそう言ってみせた。悲壮感がたっぷりと含まれた声である。実際、おれは悲しくて仕方が…
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輝かしい夜を見た
「一ヶ月ほど、音信不通になるかもしれません」 ホテルの最上階にあるレストランで、美空は突拍子もなくそう言った。それを聞いて、毒島は手を止めて言葉の続きを待ったが…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「あんた、膛馬明だろう!」 おれは改めて、目の前に立ち塞がる男へ目を向けた。 可哀想なくらいの醜男であるが、その醜悪な面が、今はよりひどいものになっている。おれ…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「私は毒島さんに、恋人になって欲しいとか、伴侶とか親友になって欲しいわけでは無いんですけど、毒島さんがこの世に居てくれるのが嬉しいとは思ってます」 そう言い終わ…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「聞いたぜ、お前のこと」 毒島は缶ビールを手にしたまま、小指を立てて美空を指しながら言った。毒島が飲んでいるのと同じ、金エビスの空き缶がテーブルにゴロゴロ転がっ…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
おれは、とてもいい気分になっていた。何故かというと、可愛い女の子がおれのやんごとなきものを咥えているからである。仰向けに寝転んだ脚の間で、小さな頭が動いている…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
それは、ちょっとした事故のために起きたことだった。 おれがひること美空を引き連れて、とある仕事に向かおうとしている時のことだ。いつものようにひるこがちょっかい…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
美空は少し前のことを思い出していた。 地面に置かれた部下の生首を、車で轢き潰した時のことである。敵の罠である可能性があったにせよ、美空は少しも躊躇せずにその生…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「会いたかったぜ」 開口一番、毒島はそう言った。 高層ビルの屋上で、熱風じみた夏の夜風になぶられながら、美空は毒島と向かい合っていた。毒島のすらりとした長身は、…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「鳳介の野郎は?」 美空を背後から呼び止めた毒島の、第一声がそれだった。 二人は今、小田原の御幸ヶ浜にいる。砂浜に立ち尽くし、海を眺めていた美空の元へ、毒島が後…