ミス晶♂
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ミス晶♂(魔法使いの約束)
「治してください」 その声と共に、突然室内に現れた扉を見ても、フィガロは特別驚かなかった。その扉から現れたミスラと、ミスラの手に抱えられた見覚えの無い男を見ても…
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答え合わせはお茶会のあと
「昔、付き合ってた人がいたんですよ」 お茶会の席で、ミスラの口から唐突に語られたその言葉に、賢者は一瞬固まってしまった。口元に運んでいる途中のティーカップが、中…
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獣の性欲
することもないので、ミスラは退屈凌ぎに中央の市場へと足を伸ばした。ここは北の国と違って、いつ来ても人と出店で賑わっている。人生のほとんどを北の国で過ごしてきたミ…
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微熱の波の中で
意識を取り戻した時、賢者がまず知覚したのは、自分の体の形だった。頭のてっぺんから手足の先に至るまで、体の全てが熱を帯びて茹っている。 いつもなら、ベッドの中に横…
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壊れたままでも
夜遅くなっても賢者様が部屋に来ないので、こちらから迎えにいくことにした。特別時間を決めて待ち合わせしているわけではないけれど、それでもだいたい同じ時間に賢者様は…
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取るに足らない寓話
僕のおうちは、他のみんなよりも少し遠いところにあるから、いつも帰り道の途中でお友達とお別れする。何度も振り返ってはバイバイして、お友達が豆粒みたいな大きさになっ…
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化けの皮
分厚い雲に覆われた薄暗いある日のこと、「魔物を退治して欲しい」という依頼のために南の国へやって来た賢者は、森の出入り口付近を一人でぶらついていた。魔物が住んでい…
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しかくがいっぱい
ミスラは賢者に手渡された紙を、ひどく奇妙なものを見るようにしげしげと眺めた。その様子を見て、賢者はやや気恥ずかしさを覚える。ミスラが手にしている紙には、ある単語…
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麻痺したような心中で
桜吹雪とは、こういった景色を指すのだろうか。 三月の透き通った青空の下、人気の無い校庭を歩きながら晶はそう思った。桜の花びらが風に吹かれて舞い上がり、校庭の隅々…
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ミス晶♂(魔法使いの約束)
グランヴェル城の上で輪になって飛んでいる最中、ムルが列を乱して城へ下りようとした時、開催式の準備をした人間たちはともかく、他の魔法使いたちは皆いつものことだと平…