トマ人
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たぶん一生、
まさかこの自分が、遊園地でデートをすることになるとは思ってもいなかった。自分の性格だとか年齢だとか、それらを全部ひっくるめてそういうものが似合わない男だと自覚…
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入水
明日は久しぶりの休みだから、とトーマを寝所に招き入れた。静かな夜だった。トーマは望む通りのことをしてくれた。着物の合わせ目から潜り込んで、少しずつ体を暴いてい…
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近くて遠い場所にある
『お昼 いっしょに食べませんか』 平日の昼間、突然送られてきたそのメッセージをもう三度は読み直した。オフィスの自席で、大きく息をつきながら椅子の背もたれに身を…
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喪服
つい先日、稲妻で有名な反物屋の主人が亡くなった。 まだ中年と呼んでもいい歳だったので、死ぬには早過ぎるほどだったが、普段の酒浸りの不摂生を知っている者からす…
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銀糸
※モブ若のような描写があります 日が落ちて、段々と周囲が薄青く染まっていく時間帯。 ぽつぽつと酒場の明かりが目立ち始めたのを見て、今日はどこで飲もうかと考え…
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庭園
紫陽花の咲く庭園を、彼と散策した日のことを覚えている。 いかにも梅雨時らしい天気だった。雨こそ降っていなかったものの、湿度が高く、服の内側で肌がじんわりと蒸…
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勘違いしてしまうから(※R18)
甘酸っぱい汗の匂いが、寝所の中に充満している。 情事の後、こんな風にしてトーマに抱かれて眠るのを綾人は好んでいた。普段は公務で忙しく、顔も合わせない日々が続…
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ほだされていく(※R18)
綾人にとってのトーマは、他の人間たちとは明らかに違う、唯一の存在だった。 肉親である綾華を除いてただ一人、心からの信頼を寄せている相手だと言えばその特別さも…
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犬には餌をあげましょう(※R18)
「神里様は優秀な忠犬を飼われているようで、愚鈍な部下ばかり持つ私としては羨ましい限りです」 とある料理屋の一室で、脂ぎった顔の男がニヤつきながら円卓越しにそう…
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夜の中で光が伸びる
今日、合コンに行ってきてもいいですか、と彼からお伺いが来たのはちょうど昼休憩の時だった。 電話越しの彼の声は、さりさりという砂嵐のような音が混じっている。ス…