魔法使いの約束
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寝顔
穏やかな朝だった。朝の日差しに満ち溢れた廊下に立って、俺は賢者様を起こそうと、扉越しに声をかけていた。 何度か呼びかけてみたものの、壁一枚隔てた部屋の中からは物…
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ゆりかご
フィガロには、幼少期から何度も繰り返し見ている夢がある。おそろしく巨大なものが、こちらへ押し寄せてくる夢だ。 夢の中で、フィガロは子供の頃の姿をしている。ミチル…
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今はそんなに楽しくないね(※R18)
その日は雨が降っていた。雨の勢いは穏やかで、耳を澄ましてもさざなみのような音がするばかりだった。午後五時半。帰りの電車は息苦しいくらい混んでいた。 その時、…
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くっついてください
寝巻きに着替えた賢者様は、着膨れている普段の姿も相まって、ひどく痩せっぽっちに見える。北の国でよく見かける、飢餓寸前の野うさぎを思わせる姿だ。けれど、この細い手…
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あんな風に笑うくせに
これが夢であることを、ミスラはすぐに理解した。忌々しい厄災の傷によって不眠症を負わされてからというもの、夢自体を見ることが少なくなったミスラだが、それでもたった…
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飴玉
※何らかの力によって元の世界に戻されそうになる晶くんを連れ戻すミスラがいます ガタン、と大きく体が揺れて、晶は弾かれるように飛び起きた。慌てて周囲を見渡すと、「…
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発露
ミスラの隣で幾つもの夜を明かした末に、賢者が実感していることが一つだけある。 今現在、賢者はベッドの上でミスラとじゃれあってる最中だった。仰向けに横たわる賢者の…
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肉つき
賢者と共に街に出かけたミスラは、見知らぬ女に声をかけられた。 年末を目前に控えた街は、普段以上の活気を見せており、いつもなら見られないような出店も多くある。ミス…
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代替
西の国で依頼をこなし魔法舎に帰還した賢者は、真っ直ぐに自室へ向かった。ドアを開けて、室内に足を踏み入れると、慣れ親しんだ部屋が彼を出迎える。 すると、主が居ない…
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必要ありませんよ
今日のミスラは不機嫌だった。ベッドの上で猫のように丸くなり、シーツを噛んでキシキシと歯軋りをさせている。それに、ベッドに腰掛けている賢者に対して、背中を向けて寝…