サイコダイバーシリーズ
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文美(サイコダイバーシリーズ)
「めでたいじゃねえか」と鳳介は言った。「めでたいだろ。仲良しになれたんだから」と。 「まあ、男同士で大人しく乳繰り合ってるなら構わねえよ」と毒島は言った。「ただ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
五月の大型連休の間、何の予定も入っていなかった美空と文成は、そのほとんどを二人きりで過ごしていた。連休だからといって特別趣味があるわけでも無い二人は、出かけるこ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
文成が自分に好意を持っているらしいと知った時、美空はさほど驚かなかった。 文成仙吉という男は、他者に情を抱きやすい性質なのだろう、と考えていた為である。一度や二…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
とっ散らかったベッドの上で、文成は目を覚ました。彼を覚醒させたのは、目を灼きそうなほどに強い陽射しだった。 文成は呻きながら身を起こした。ブラインドの隙間から射…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「じゃあ、以前は青山のマンションに住んでいたんですね」 美空の言葉にそうだと頷いてみせる。二年前、おれは青山のマンションで一人暮らしをしていた。庶民には手の届か…
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いつか忘れゆくはずだったもの
「美空さん、あたし、池袋のラウンジで働き始めたの」 あどけない女の声だった。ようやく20代に入ったかどうかという幼さを滲ませていた。留守電に入っていたその声に、…
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駆け引きにもならない問答
「おめえが女だったら良かったのにな」 おれは、ずいぶん前から思っていたことを美空に言ってやった。対面に座る美空は、ちらりとこちらに視線を向けた後、すぐに目を伏せ…
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愛すべき珍獣または隣人として
その日、東京では珍しい大雪が降った。 コンクリートは白く染まり、それだけでなく屋根や看板や車の上にも雪がやわらかく積もっていった。テレビのニュースでは、電車やバ…
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まだ愛ではないけれど
「おれのペニスが、馬鹿になっちまった」 ベッドの上に仰向けに寝転んだまま、おれはそう言ってみせた。悲壮感がたっぷりと含まれた声である。実際、おれは悲しくて仕方が…
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輝かしい夜を見た
「一ヶ月ほど、音信不通になるかもしれません」 ホテルの最上階にあるレストランで、美空は突拍子もなくそう言った。それを聞いて、毒島は手を止めて言葉の続きを待ったが…