「デ・ジ・キャラット」の思い出

最近、保育園時代のあれこれをフォロワーと話していたのだが、その際に「デ・ジ・キャラット」のことを思い出した。
せっかくの機会なので、当時の思い出をここに書いていきたい。

出会いは保育園時代にまで遡る。
私は青森生まれ青森育ちなのだが、青森県はとにかく子供向けの娯楽が少ない。その最たる例がテレ東アニメが放送されていないことだ。これのせいで県外に旅行するまでちびまる子ちゃんを見たことがなかった。そのくらいアニメ不毛の地なのである。
それを不憫に思ってか、母親はよくレンタルビデオ屋からアニメを借りてきてくれた。
それが前述した「デ・ジ・キャラット」である。

デ・ジ・キャラットシリーズは、主人公でじこと、その妹分ぷちこ。そしてお付きのゲマ。この三人を中心として展開されるシリーズ作品である。
漫画・アニメなど当時様々な媒体で作品が出ていたものの、私が履修していたのはアニメシリーズの中の「ぱにょぱにょデ・ジ・キャラット」「デ・ジ・キャラットにょ」のふたつだ。
どちらもなかなかに話数が多く、特に「にょ」の方は第4期まで作られていた。当時のアニメシリーズとしては結構長期だったと思う。それゆえに保育園児の思い出を占めるには十分すぎるボリュームだった。
内容としては、一話完結型のドタバタギャグがメインであり、子供としても親しみやすいストーリーで、おじゃる丸やサザエさんを見ているのと同じような気持ちで視聴していた。

しかしながら、なぜ母親がわざわざこの作品を選んだのか……つい最近までずっと疑問に思っていた。
なにせ、でじこは知る人ぞ知る、オタク文化を代表するキャラクターだ。秋葉原内の巨大看板に長く飾られていたこともあり、まさにオタクの象徴のような存在でもあったらしい。
当時はそんなことも知らずに楽しんでいたのだが、そんなアニメを何故、保育園児の私に見せていたのか……。
そう不思議に思っていたら、どうやらシリーズ内アニメ作品のうち、「ぱにょぱにょデ・ジ・キャラット」「デ・ジ・キャラットにょ」は最初から子供向けアニメとして作られていたらしい。
なるほどつまり母親は、レンタルビデオ屋で「子供向けアニメ」というジャンルにこれが置いてあったから借りてきただけだったのだろう。
良かった、オタクにするための英才教育として借りてきてなくて……。

憂鬱な現実世界と、「ぱにょぱにょ」

他のアニメとは一線を画すデザイン、可愛い女の子たち。それだけでも十分魅力的なのだが、それとは別に私がこの作品にのめり込むきっかけがもう一つあった。
それは、当時の保育園生活があまりに憂鬱だったからだ。

当時は色んな空気がゆるく、大人→子供への体罰が割と許されていた。通っていた保育園もそんな感じで、子供への怒号や暴力もままあった。特に多かったのが、子供の腕を保育士さんが叩くという躾で、痛いし赤く腫れるしで子供ながらに恐怖だった。登園拒否こそしなかったものの、「明日になればまた保育園に行かなきゃいけなくなる……」と思ってこっそり泣くなど、なかなかに可哀想な保育園児時代を送っていた。
そんな中で出会ったのが「ぱにょぱにょ~」シリーズである。

この作品は他メディアミックスと比べて明らかに低年齢向けにデザインされており、でじこたちが8歳ほどに設定されてたり、デフォルメも強めに描かれている。
「自分と同じくらいの歳の子なんだな」と思いつつも、彼女らのいる世界は私のいる現実世界よりもずいぶん色鮮やかで楽しそうに見えたのを覚えている。
そして、OPの歌詞が当時の私を強く引き付けた。

笑った顔って やっぱいちばん君と似合うにょ?
ぱぱぱ ぱにょぱにょぱ だからラッキ☆クッキ 一緒にね☆たべよー

困った時って ちょっとなんでも話してごらんにょ?
ぱぱぱ ぱにょぱにょぱ チカラになれるから

萌え萌えした女の子たちのキュートボイスで歌われるこの歌詞。社会の仕組みも分からないうちから、怒声や暴力に晒されている保育園児の心にどれだけ沁みたことか……。
さらにOPの後半には「日曜日が毎日~」という歌詞まであり、「本当にそうだったらいいのに……」と思いながら、現実から逃避するようにデ・ジ・キャラットの世界にのめり込んでいった。

「にょ」と、オタクとしての芽生え

「ぱにょぱにょ~」を見終わって、次に「にょ」を見始めた私は、あることに気付き始める。

あれ、でじこたちって可愛いな……?

低年齢層向けにデフォルメされていた彼女たちは、「にょ」になると頭身が少し高くなって、いかにも「お姉さん」という感じになる。
しかも「ぱにょぱにょ」にはいなかったうさだ(ラ・ビ・アン・ローズ)まで登場し始めた。

このうさだ、露出が多くて、胸も大きくて、うさ耳までつけているという、いかにも「萌え」まっしぐらなキャラだった。
最初はりんなやミケの居ない「にょ」に物足りなさを覚えていた自分も、この萌えパワーにどんどん身を焼かれていった。

「にょ」が中盤に差し掛かると、「ぱにょぱにょ~」でメインキャラをしていたりんなミケが再登場し、サブキャラ程度の出番を貰えるようになる。ぱにょぱにょ~から見始めていた自分には大歓喜な展開である。そして私はあることに気付いた。


可愛いなぁ…りんなちゃん……


りんなちゃんのあまりの可愛らしさに、いよいよオタクとしての「芽」が発芽したのである。

再登場したりんなちゃんは、大人びた頭身になると同時に、衣装も普通の私服っぽいものからシスターっぽい格好になっていた。それがまた、オタク心をくすぐったのだ。
りんなちゃんの特徴をニコニコ大百科から引用させてもらうと

  • 身長146cm(ネコ耳含む)・体重36kg
  • シスターのような服装  
  • 喋るとき語尾に「みゅ」を付ける
  • おっとり、のんびりな性格で、どんな場所・状況でもすぐに寝てしまう 

どうだろう。これだけで「いかにもオタクが好きそうな、大人しくてマイペースな女の子」であることが伝わるだろうか。
霧子、ミントちゃん、ラ・プルマちゃん、ノア、マシロ……。「大人しいけれど内気というわけでもなく、どちらかというと振り回されるより振り回す側のマイペースな女の子」という、どのジャンルでも決まって私が好きになる女の子たちの源流は、おそらくこのりんなちゃんにあるのだろう。
榎本温子氏の演技も相まって、本当に愛らしいキャラクターになっていた。
これ以降、私はりんなちゃんの出番が少しでも増えたら喜び、画面内で彼女を必死に探すようになった。
当時は幼く、自他境界が曖昧だったため、りんなちゃんをキャラクターとして好きだったのか、初恋の女の子として好きだったのか、自分がりんなちゃんのような女の子になりたかったのか、いまだに理解していない。

唐突な学パロ編と二次創作への適性

この「にょ」は4期になると突然、でじこたちがプリンセススクールに通う内容となり、学園モノアニメへと変貌する
今でも謎な路線変更であり、当時のファンからも色々言われているらしい。保育園児から見ても「唐突だな……」とは思ったが、視聴を辞めるほどではなかった。
このプリンセススクール編からは、でじこたちが制服姿になるのだが、これがまた革命的なデザインで、昨今のアニメでもなかなか見ないほどに秀逸な見た目となっている。

淡いブルーグレーのボレロ、膝下できゅっとすぼまったワンピース、ところどころにあしらわれた控えめなフリル……涼しげ&上品なこのデザインに、当時の私はかなり惹きつけられた。
突然の路線変更にも関わらず視聴継続できたのも、この制服の可愛さのおかげだったと思う。
公式サイト「でじこのへや」で一部アニメキャプチャを見れるのだが、ちっちゃな静止画越しでもこの愛らしさが伝わるだろうから、ぜひ気になった方は見に行ってほしい。

いまにして思うと、これって公式学パロ二次創作だな……と思っていて、これもまたオタクとしての適性を保育園のうちから広げてくれたのかもしれない。
慣れ親しんだキャラたちが学校に通うとしたら、どんな風に制服を着こなすのか、どんな風に授業を受けるのか……「学校」というシチュエーションを使ってキャラを深掘りしてもらえる楽しさをこの時から知ったのだ。それを思うとプリンセススクール編には感謝するべきかもしれない。

オタク・コンテンツの原点

こうして思い返してみると、自分の趣味嗜好の多くがこのデ・ジ・キャラットによって形成されているな……と感じた。
大人しくてマイペースな女の子が好き、というのがまさにそれで、他にもデフォルメ造形やメイド服への「好き」もデ・ジ・キャラット由来なんじゃないだろうかと思えてきた。もちろん学パロ二次創作への扉もだ。

私は見ての通り今でもバリバリオタクなのですが、今の自分の価値観をでじこが形成してくれたのかと思うとめちゃくちゃ嬉しい。おそらく言語化・意識化できないくらいの僅かな感性もこの作品によって培われたのかもしれない。そう思うと今こうして書いてる文章だって、でじこを通っていなければ全く違う文章になっていただろうし、人生のオタク・コンテンツにおける原点がもしかしたらこの作品だったのかもしれませんね。

というか、保育園時代の思い出しか語っていないのに、結構な文章量になったなあと思った。しかもこれ以降の人生のどこかでデ・ジ・キャラットに再燃したこともないのに(小学校に入ってからはポケモンにのめり込み、そちらに鞍替えしたので)
例えば保育園時代の4年間と大学時代の4年間を比べた時、ほとんどの人は大学時代の方が充実した日々を送っていたと答えると思う。それは後者の方が金銭的に余裕があるし、バイトでも勉強でも恋愛でも自分から行動に起こせる物の範囲が保育園時代よりグッと増えるからなんだろう。
しかし自分はどうかと言われると、大学生活よりも、デ・ジ・キャラットに向き合っていた保育園時代の方が、妙に印象に残っている。充実していたかどうかは分からないけれど、少なくとも、いまの自分に繋がっている感覚は、あの頃の方が強い気がする。

それは多分自分が根っからのオタクであり、人生の主軸がオタク・コンテンツにあるからなんだろうなあと思いました。

(余談)

「令和のデ・ジ・キャラット」公式チャンネルが、これまでの楽曲をまとめた再生リストを作っていて、その中の「ダイナマイト★I・N・G」という曲を昨日久々に聞きました。

いつでもI・N・G!  君に届けよう
キラキラI・N・G!  未来駆けめぐる
パワー全開  夢を抱えて
前代未聞の ダイナマイト!

やりたい事だけ頭いっぱいにょ
ハチャメチャ展開 巻き起こすにょ
どんどんキャラたち 増加中だけど
所詮は脇役 目じゃないにょ!

素晴らしい……。あの時代のでじこたちが持っていたパワーが、あふれんばかりに満ちている。これでもかと可愛い声で繰り返される「あいえぬじー!」も最高だ。

この曲がリリースされた2003年は、私も生まれて数年しか経っていなかったので、社会がどうなっているかなんてあまり覚えていないけど、なんとなくうっすらと暗い空気が漂っていた気がする。
「2000年に恐怖の大王がやってきて世界が滅ぶ」なんて噂がニュースで取り上げられていたような時代だ。そこから派生したオカルトブームや、宗教絡みのあれこれ。2000年を迎えても勿論世界の終わりなんてやってこなくて、「あれ、もしかして1999年まで積み重ねてきた負債って、これからちゃんと返していかなきゃいけないんですか?」みたいな意識があった。そしてオタクに対する世間の風当たりも強かった。

そんな中で、テレビ画面の中でこんなにもパワーに溢れた歌を届けてくれたでじこたちは、オタクたちにとってどれだけ光に溢れていただろう。多分、私が思うよりずっと力強い光をまとっていたはずだろうな、とでじこたちの歌声を聞きながら思った。

パワー全開  夢を抱えて
前代未聞の ダイナマイト!
才色兼備の ダイアモンド!
大胆不敵な ダイナマイト!