※軽度のSMと窒息プレイ描写あります
リネはきれいな子供だった。ただきれいというだけではない。どこか不穏な影をまとった子供であった。
何か、後ろ暗いことをしていそうな、普通と違うことを経験していそうな、背後に物語を背負っていそうな、そんな想像をかき立てる容貌をしていた。
暴きたくなる容姿、とも言えるのかもしれない。彼の白い肌と、用心深そうな視線は、傷つけたくなるような可憐さがあった。暴いて暴いて、傷つけていったその先に、彼の芯をようやく見ることができる。そう思わせる何かが彼にはあった。
「だって、リネくんは虐められるのが好きだろう?」
ベッドの上でそう問いかけられて、リネは一瞬何を言われたのか理解できなかった。あまりにも予想外の言葉だったから。しかしすぐに平静を取り戻し、睨むように目の前の男を見る。
「リオセスリさんにSっ気があるだけでしょ」
「そうかなあ」
リオセスリは、あの捉えどころのない表情を浮かべたまま首を傾げた。それだけの仕草が、映画のワンシーンを切り取ったかのように、様になっている。男くさい顔立ちが、子供じみた仕草でより一層際立っていた。
リオセスリが住んでいるマンションの、寝室として使われているこの部屋は、いつ来ても香水の匂いが濃く漂っている。ベッドに直接吹きかけているのではなく、彼の体から移ったものなのだろう。それがまるで気配のように、この部屋に充満している。だからここに足を踏み入れるたびに、リネは息苦しさを覚える。匂いのせいではない。吐息や視線、指や体液といったリオセスリの全てに、体中を包まれ、汚されているような感覚に陥るからだ。
感覚というより、実際にそうなのだろう。ついさっきも、リネは体を弄ばれて、そばに転がっているちゃちなピンク色のおもちゃによって絶頂させられたばかりなのだから。そのために彼の全身は汗ばんでいて、呼吸はすでに整っているものの、肺は未だ熱く湿っていた。
不意に、リオセスリの手が顔へと伸ばされる。リネは無意識に身構えたものの、実際には優しい手つきで髪をすくい取られただけだった。普段と違って下ろした髪は、肩にかかるほどの長さがある。その毛先をリオセスリの手がひと束ずつすくい取っては、指の隙間からさらさらと逃がしていた。
「…………」
ゾクゾクと、リネの腰を這い上がるものがあった。髪なんて、美容院でいくらでも触られているのに。神経を一本ずつもてあそばれているような心地が、彼の体を貫いているのだ。指先にすくい取られる感触も、頭皮がわずかに引っ張られる感触も、こぼれ落ちた毛先が頬をくすぐる感触も、愛撫のように彼を責め立てていく。
「こうやって、髪を弄ってあげてる時もさ……」
「…………」
「虐めたいなーって思いながらやってる時だけ、気持ちよさそうな顔してるだろ」
「してない」
食い気味の即答に、リオセスリは喉を鳴らして笑った。太い首の中で、喉仏が声に合わせて上下する。リネの視線は、何故だかそこに吸い寄せられていた。喉だけではない。リオセスリの、太い腕や、苦い汗の匂いや、リネの手首ほどまであるペニスのような、男性的な部分に彼はいつも目が離せなくなってしまう。
リオセスリが、意地の悪い笑みを浮かべる。全てを見透かすような瞳の中で、瞳孔がより黒さを増した。秘密を共有するように、ひそめた低い声で「なあ、リネくん」と囁く。
「もっと虐めてあげようか」
「……何言ってるのさ」
「リネくんはこんなに虐められたがってるのに、あんたにひどいことする奴なんて、今まで居なかったんだろう? 家族もお優しい子ばかりで、先生もお友達も、優等生のリネくんを叱ったりなんてしなかったんじゃないか」
髪を弄んでいた指先は、途中からリネの耳たぶに触れていた。薄く柔らかいそこを撫で、今度は脈でも測るように、片耳全体を手のひらで覆う。まるで水底にいるように、リオセスリの声がくぐもって聞こえて、頭頂部へ何かが走り抜けていった。耳が熱い。そこに血液が集中しているように錯覚してしまう。
「あんたは実際によくやってるよ。家族のことを一番に考えて、自分のことを蔑ろにしてきたんだろう? けどあんたにだって、責任を取ることを怖がったりするような、人並みの欠点もたくさんある。でも、誰もそれに気づきもしないし、あんたを責め立てることもない訳だ」
馬鹿げた屁理屈だ、とリネは思った。こんなの、うさんくさい占い師が口にするような、誰にだって当てはまる言葉じゃないか──そう分かっているはずなのに、まるで催眠にかかったように、頭がぼーっとし始めるのを感じた。
脳の芯が熱い。こちらを見下ろすリオセスリの目。その瞳が、嗜虐的な光を帯びている。甘い顔立ちと相まって、並の女性なら蕩けてその場に崩れ落ちそうな視線だ。気持ちいい。眩暈さえ感じながら、リネはその視線を浴び続けた。
ふと、リオセスリが手を離した。耳たぶが、数十秒ぶりに冷気に触れる。それに意識を引っ張られて、覚醒しかけた彼の頬に、奇妙な衝撃が加えられた。
パン、という破裂音。小さな顔が傾いた。何が起こったのか、リネはすぐには分からなかった。頬が熱い。口の中に痛みが走り、頬の内側から、血が滲んでいく。中途半端に浮いたリオセスリの手を見て、「頬を張られたのだ」とようやく気がついた。
ドク、と心臓が強く呻いた。不気味な汗が、全身からぶわりと吹き出し始める。痛みが、じんわりと広がりつつあった。おそらく、全く力を込めずにやったはずで、だから痕も残らず血もすぐに止まるだろう。それなのに、リネの体は恐怖で締めつけられている。
「セックスさせてくださいって言いな」
意地悪く、頬を張った側の手をぶらぶらさせてリオセスリが言う。
「俺に掘ってもらう側なんだから、それくらいは言ってくれないとなあ」
リオセスリは、返事を待つために数秒黙った。リネは呆けたような顔をして、彼を見上げるばかりだった。その額はじっとりと汗ばんでいる。異様な目をしていた。
リオセスリは、長く浅く、息を吐いた。物覚えの悪い生徒を前にした、教師のような表情で。さっき頬を張った手が、もう一度持ち上げられる。目に焼きつかせることを意識した、焦ったいほどに時間をかけた動作だった。リネの目が、ますます見開かれていく。手が頭上まで掲げられた時、その目にあるのは明らかな恐怖だった。
風を切る音がした。リネの肩が大きく跳ねる。叩かれるより先に、声が喉を出た。
「っさせ、て、ください……」
掠れた声だった。そのために最初の部分は全く声になっていなかったが、それを咎める気はリオセスリにはなかった。楽しげに唇を歪め、振り下ろしかけた手で、頬を包む。
「いい子だ、リネくん」
叩かれずに済んだというのに、リネの呼吸は浅い。は、は、と唇を出る呼気。硬い親指が、その吐息を楽しむかのように唇をなぞる。リオセスリの視線が、その顔から下へと移動した。「へえ、」と囁くように零す。
「虐められて感じたんだな」
その視線を追う。彼の言葉通り、リネの先端からは、透明な蜜が糸を引いて垂れていた。一度射精してから乾いていたはずのそこが、新しい先走りでとろとろと濡れている。
「ち、が……」
う、と言おうとした口が、言葉に詰まる。リオセスリの指が、細い喉を圧迫していた。しかも、喉の真ん中の気道を押しつぶす形で。
「可愛いなあ。リネくん……」
「ぁ、が、」
力任せに、シーツに押し倒される。背中に感じた衝撃が、そのまま気道への圧迫に加わる。
「ひ、ぁ、っは、」
首から上が、赤黒く膨らむような感覚をリネに覚えさせる。実際には、彼の顔は神聖なまでの白さを維持していたが。
薄い唇が、酸素を求めてはくはくと開かれる。リオセスリの視線は、その顔の上をゆっくりと這いまわった。汗ばんだ額、白いまぶた、涙の膜が張った瞳。薄い鼻梁、甘い唇。リオセスリの顔が憐れむような微笑を浮かべた。
「白目剥くまでイかせてやるよ、リネくん」
後ろの穴は、尻を伝った先走りで既に濡れていた。指で何度か愛撫したのと、これまでの経験のおかげで、入れるには充分な柔らかさをしていたはずだった。それでも、リネの体には負担だったらしい。
ごちゅ、と音を立てて、根元まで一気に押し込まれる。脚を持ち上げられ、折り畳まれた体勢で、リネの体が大きく跳ねた。
「っひい゛ぃ゛ッッ!?!?」
「お〜〜〜……」
ヘソから下が、隙間なく満たされている。突き破られそうなほどみちみちになった中で、肉の壁が、絞るようにリオセスリのモノを締めつける。
「は、ひ、っひ、ぃ゛、」
奥歯がガチガチと鳴っている。ぐるりと上を向いた眼球は、おそらく現状を理解できていない。後ろの穴だけが、リネの精神を置き去りにして肉棒を美味そうにしゃぶっていた。
「動くよ、リネくん」
「あ゛」
ずりゅ、と勢いよく引き抜かれる。陰茎の凹凸が、あちこちに引っかかりながらリネの中を撫で回す。そしてそれ以上のスピードで、ばちゅん、と再度奥に叩きつけられた。
「ひ、」
息つく暇もなく、ピストンが始まった。カリ首が中を行き来し、ギリギリまで引き抜かれる。一番太い部分で広げられた穴の入り口の感触に、雄としてのプライドがへし折られていくのを感じた。
「リネくんのお腹、こんなに薄いのにちゃんと内臓詰まっててえらいなあ」
ヘソの下に手を添えられる。硬い手のひらの下で、ピストンに合わせてゆるやかな凹凸ができていた。
「あ、あ、あ、あ、」
逃れようとするように、リネの腰が浮き上がる。もちろんそれを許すはずもなく、それ以上の力でペニスが奥へ叩きつけられた。ぴゅる、と白濁混じりの先走りがリネのものから飛んだ。口の端からは唾液が垂れて、どうしようもなく淫らな顔をリオセスリに晒し続けている。
絶頂が、すぐそこまで来ていた。それを表すように、ガクガクと腰が揺れ始める。
「もう限界?」
「っ、ふ、うっ、」
「リネくんは堪え性がないからな〜」
「あ、あ、もう、いく、」
「じゃあ、俺も早めに出すわ」
壊れるなよ、と一言囁いて、リネの脚がより持ち上げられる。浮いた尻に、ほとんど真上から勢いをつけて、どちゅ、とペニスが挿入された。
「ひい゛ッッ!?」
さっき以上に、隙間なく中を満たすペニスの感覚。真っ白になった頭の中で、肉筒を行き来する陰茎の感触だけが、鮮明に脳を焼いている。先端とカリ首と幹の、全部が余すとこなく快感を呼び覚ます。リネを気持ち良くさせるためだけに、作られた部分だと言われても信じられそうなくらいに。
もはや意識を保っているのもやっとなリネは、口の端に泡を溜めながらされるがままになっていた。半開きになった口から、赤い舌先がちろちろと覗いている。限界まで張ったリオセスリの陰嚢が、肌に打ち付けられる感触に「男に犯されている」という事実がわずかばかりの理性に刻み込まれていった。
何度目かのピストンで、リネの全身が大きく跳ねた。ピンと両足が突っ張られる。リオセスリはそれを見逃さなかった。中が、それに合わせて引き絞られる。
「あーー……」
吐息混じりに、リオセスリが声を漏らす。ほんの一、二秒動きを止めた後に、限界まで張ったペニスを捩じ込んだ。
「……ッッッッッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
リネが、絶頂へと叩きつけられる。目がぐるりと上を向いた。水っぽい精液が出てるのが分かる。そしてほとんど同時に、リオセスリもまた昇り詰めた。奥に押し当てたままのペニスから、精液が勢いよく注がれた。数日ご無沙汰だったために、量も濃さもかなりのものである。たっぷりと注がれていく感覚を、リネも確かに感じていた。
明らかに種付けを目的とした動きで、小刻みなピストンをされる。リオセスリは最後に、穴の縁ギリギリまで引き抜いた状態で、輪っかにした指で肉棒を何度か扱き、最後の一滴まで注ぎ込んだ。
しばらくしても、火照ったままのリネの頬には、涙の跡が赤くついていた。目にも口にも、表情の全てに性交の余韻が残っている。
「尻に出してこんなに善がってくれるの、女の子でもそうそういないよ」
リオセスリにそう言われて、寝そべったまま眼球だけを動かしてじろりと睨みつける。しかし溶けた飴玉のような瞳では、さして怖くも見えなかった。リネ側もそれを分かっているのか、すぐに視線を逸らした後に、その目がリオセスリの下腹部へと下りていく。
「気になるかい?」
そこには、出したばかりなのに勃ち上がったままのペニスがあった。きれいな顔に似合わず、グロテスクな色味をしている。先端に向かって赤黒く染まり、幹の部分は血管が表面に浮かんで、カリ首の部分はかなりの太さを持っていた。勿論、一番細いだろう部分を測っても、リネの手首くらいの太さはある。リオセスリからすると、あれだけ濃いセックスをしておいて、萎える方がおかしいという気持ちだった。
じっと見つめていた大きな瞳が、恥じ入るようにそっと逸らされる。その仕草に、何故だかリオセスリはゾクゾクとした。あんなに乱れていたくせに、という苛立ちで下腹部に血が集まり出す。立ち上がり、小さな体に覆い被さった。
「リーネくん」
そして、ベチ、と音を立ててペニスの先で鼻先をはたいた。ギョッとするリネの顔に、先走りがパタパタと落ちる。
「そんなに見たいなら、ほら」
頬にべったりと押し当てる。餅のように白いほっぺに、赤黒いペニスが置かれているのはひどく淫らな光景だった。屈辱だ、と言わんばかりに眉根を寄せたリネだったが、その顔はすぐに蕩けて、無意識のうちに先端を口に含もうとしていた。半開きになった唇に、「あ、舐めるなよ」とペニスが逸らされる。
「俺のをしゃぶった口でキスしたくないだろ」
逃げた先で、鼻筋に先端を押し当てた。そのまま、鼻梁をゆるゆるとなぞっていく。リネは素直に口を閉じた。。蕩けた顔のまま、されるがままになっている。鼻梁、額、頬と、次々に先走りで汚されていくのを、少しも抵抗しなかった。
一旦顔から離し、ほっぺをペニス全体で右に左にとはたく。その度に目の潤みが増していった。発情しきった顔。誰がどう見てもそう形容する表情だろう。
ここまでマゾっ気のある子も珍しい。しかも、こんなにきれいな顔立ちで。もはや称賛さえ抱きつつリオセスリはそう思った。この顔を引き出したのが自分なのだと、分かっているからこそたまらなかった。
「ほら、終わり」
腰を引いてペニスを離す。無意識なのか、名残惜しそうに迎え舌で追おうとした顔を手で止めた。「四つん這いになりな」とリオセスリが言う。
「次はバックで入れてあげるから」
なめらかな曲線を描く裸体は、その白さも相まって美術品のように見えた。尻の割れ目では、先ほど出した精液がわずかに溢れて下へと伝っている。栓をするように、赤黒いペニスを押し付けた。ビク、と薄い体が敏感に跳ねる。
「さっきよりも、ゆーっくり入れてやろうか」
言い終わるより先に、ずりゅ、と先端を中に埋めた。「あ」と濁音混じりの声が上がる。そのまま、這いずるように入れてやると「あ、あ、あ、」と小刻みに声が出た。
体位が変わったおかげで、かなり深いところにまで届く。リネの体は既に開かれ切っていて、すぐには辿り着けないだろう行き止まりも、先端に吸いつくみたいにしてリオセスリを受け入れていた。奥に留めたまま、あやすように最奥をトントンと揺さぶる。
「ほら、リネくんいい子いい子〜」
「う、あ、あ、やめ、え、」
「腰も回してやろうか? リネくんが好きなやつ」
「ひ、っあ、あ、あ〜〜〜……」
大きくかき回される中に、肉壁がこまかく痙攣して歓喜する。中を探られているような、暴かれているような感覚が、リネに興奮を覚えさせた。セックスに限らず、リオセスリに一つずつ内面を暴かれていくのが彼は元から好きだった。不意に、膀胱近くの柔い部分を擦られる。
「ひい゛ッッ!?!?」
「ほら、リネくんの前立腺」
「あ、あ、あ、なんで、」
「さっきは刺激してなかったの、気がつかなかったのか?」
最初の挿入時は、性急さについていくのがやっとのことだったので、リネが気がつくわけもない。カリ首の硬い部分で、コリコリと転がすように愛撫される。「あ」の形に開いた口から、唾液が垂れてシーツにしみを作った。姿勢を維持することもできなくなって、華奢な上半身がうつ伏せに崩れ落ちた。手で支えられてる腰だけが、浮いてリオセスリと繋がっている。ゆっくりだったピストンが、性急なものになりつつあった。ぱちゅぱちゅと肌がぶつかり合う。
「リーネくん」
「っひ、は、はぁ、は、」
「寝られると寂しいな」
「し、知らな、ああ、あ、あ、」
不意に、シーツに肘をついていた腕を、リオセスリに取られる。背後に引っ張られ、背を逸らしながら上半身を引き寄せられた。無理やりに起こされて、体が軋む。リオセスリがやや腰を浮かしながらピストンすると、反り返ったペニスで前立腺がゴリゴリと押される体勢になる。腰から陰茎へと、一気に昇っていくものをリネは感じた。
「っひい、は、あ゛あ゛、っあ、」
「そんな気持ちいいか? 俺も気持ちいいけど」
「あ、ぁ、ぁ、いく、」
「リネくんのヒダヒダ、俺のをしゃぶってくれるから気持ちいいよ」
「い゛、言わないで、いいっ、からっ!」
顎をすくい取られて、後ろを向かせられる。そのまま口を重ね合わせた。ピストンが止まり、やや息が整った中で、唾液を交換する。口の中の粘膜をなぶられる感覚に、リネの目が蕩けた。いつの間にか下腹部へ下りていた硬い手が、リネの陰茎を強く握った。
「あ゛、」
扱かずに、握るのと離すのを繰り返す。それに合わせて口の中の舌がピクピクと震えた。薄い小さい舌先が跳ねて、口内を叩く感触にリオセスリが笑う。
「踊り食いしてるみたいだな」
顔を離す。ほとんど受け止めきれなかったリネの顎へ、唾液が大量に伝っている。鼻の触れ合う距離で、リオセスリの目がじいっと顔を覗き込んだ。酸欠になりかけていたリネの意識が、その視線に当てられたのか、ぞわ、と粟立つ。荒い息をした捕食者に、鼻先でじっくりと観察されているような心地がした。
「リネくん、まだ白目剥いてないね」
「ぁ、なに……」
「俺あのイキ顔が好きなのに」
そう言った瞬間に、どちゅ、と最奥まで叩きつけた。奥の奥、深いところまで。反射的に、中が一気に締まる。リネの目が、ぐるりと天を向いた。
「可愛いよ、リネくん」
「お゛、あ゛、あ゛、あ゛」
ぱちゅぱちゅぱちゅ、とかなりの速さでピストンが再開する。限界まで膨らんだペニスの、亀頭と幹、カリ首の部分が、肉の筒を乱暴に扱く。前立腺に、引っかけては出し入れする。浮いた血管の形まで分かるほど、リネの後ろは満たされきっていた。変な汗が、ぶわりと全身から吹き出す。リネのペニスから、量の少ない液体が断続的に出されていく。わずかに白く濁っている、ほとんど透明の液体だった。
「何? イってんの?」
「ひ、っひ、ぃ゛、い゛、」
ガクガクと小さな体が痙攣する。リネの意識は無いに等しかった。引き寄せていた腕を、リオセスリが離す。やっと解放されるのか。そう思った途端に、大きな手が、細い首を背後から掴んだ。そのまま圧迫する。さっきペニスを握っていた時とは、比べ物にならない強さで。
「……! っ、は、ひ……!」
崩れ落ちた体が、逃げるようにシーツの上を這った。それでも逃げられるわけがない。押し上げるようなピストンが続く。痙攣する肉の中を、怒張が無慈悲にかき分けていく。
リネは無我夢中で、首を絞める手を引っ掻いた。外れる素振りもない。酸素が徐々に薄くなる。気道側はそこまで圧迫していないので、最初にした首締めより危険性はずっと低い。しかしリネ側はそんなこと知る由もないし、「首を絞められている」という認識が、彼の脳に危険信号を灯し続ける。
後ろの穴が、リオセスリのモノをきつく締めつける。それは快楽のためではなく、酸素を求める臓器が、皮膚を突き破るようにしてがむしゃらに動いてる故の、生存本能によるものだった。息を吸いたい、と体が叫んでいる。それに与えられるのは、ピストンによる快楽だけだった。したくもないのに、穴が快感を貪っている。今できるのはそれだけだったから。
「っっっ~~~~~~~!!!!」
ペニスから、透明な液体が一気に噴き出した。反動のように、腰がガクガクと揺れる。潮を吹いたのか、と妙に冷静な頭でリネは認識する。他人事のような心地だった。首元の手が緩められた瞬間に、それがようやく事実として認識された。
後ろの穴が、食い千切るようにペニスを締めつけた。ピストンは止まらない。風船みたいに、ペニスが一気に膨れ上がったかと思うと、熱い液体が最奥へと叩きつけられた。腰を前後させたまま、中へたっぷりと注がれていく。リネの体を、リネ以外のもので満たそうとするかのように。
「寝るなよ、リネくん」
そう声をかけられる頃には、リネの意識は飛び始めていた。酸素を取り込み始めた頭の中に、リオセスリのモノの脈動がばくばくと伝わってくる。既に夢を見ているような心地だった。
「寝たら、リネくんのスマホで写真撮ってやろうかな」
冗談めいた声色での提案に、リネはどうにか首を左右に振った。それだけだった。言葉の意味をちゃんと理解できていたのかも怪しい。意識が遠のいて、途切れていく。香水と、汗と情事の匂いがするシーツに、顔を突っ伏したまま彼は気絶した。