サイコダイバーシリーズ
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文美(サイコダイバーシリーズ)
「おや」 美空が声を上げる。彼の視線の先へ文成が目をやると、マンションの物陰から一匹の猫が現れるところだった。 このマンションの中には、美空の事務所が置かれてい…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
美空は、大ぶりなワインでグラッパを飲みながら、目の前にいる男を不思議な気持ちで見つめていた。向かいの席で、毒島は微かな微笑を口に留めながら酒を飲んでいる。つい先…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「ところでよ」 「はい」 「本当の名前は、いつ教えてもらえるんだい」 その言葉に、美空は心持ち首を傾げてみせた。そして、隣に座る男へ視線を向ける。きっちりと折り…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
「やい、美空」 突然そう声をかけられても、美空は驚かなかった。その声の持ち主が毒島であることも、その毒島が背後にいたことにも、彼はずっと前から気がついていたのだ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
文成は今、コンクリートが剥き出しになった部屋で、四肢を拘束されていた。床に固定された椅子に座った姿勢で、両手両足をその椅子に縛り付けられている。 「さすがの私も…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
「早く済んで良かったですね」 秋色に染まった街路樹の下を、美空と文成が歩いている。美空の方が二歩分ほど前にいた。そのため、文成からは美空の後頭部が見えている。イ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
「めでたいじゃねえか」と鳳介は言った。「めでたいだろ。仲良しになれたんだから」と。 「まあ、男同士で大人しく乳繰り合ってるなら構わねえよ」と毒島は言った。「ただ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
五月の大型連休の間、何の予定も入っていなかった美空と文成は、そのほとんどを二人きりで過ごしていた。連休だからといって特別趣味があるわけでも無い二人は、出かけるこ…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
文成が自分に好意を持っているらしいと知った時、美空はさほど驚かなかった。 文成仙吉という男は、他者に情を抱きやすい性質なのだろう、と考えていた為である。一度や二…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
とっ散らかったベッドの上で、文成は目を覚ました。彼を覚醒させたのは、目を灼きそうなほどに強い陽射しだった。 文成は呻きながら身を起こした。ブラインドの隙間から射…