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エンドロールみたい
全身から、少しずつ膜が剥がれていくような感覚だった。さなぎが徐々に羽化していくように、むずがゆい覚醒の気配が、ドクターを揺り起こそうとする。 まだ夢を見ている…
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銀博♂(アークナイツ)
ドクターはその日、ロドス艦内にある小児病棟の、とある部屋を訪れていた。 所在なく椅子に腰かけたまま、ぼんやりと部屋を見渡す。部屋は一般的な教室程度の広さがあり…
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銀博♂(アークナイツ)
ドクターはその日、秘書当番だった女性オペレーターと昼食を摂りに行っていた。 ロドスでは勤務歴の長い、落ち着いた物腰のオペレーターだ。彼女が声を荒げているところ…
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銀博♂(アークナイツ)
ほんの一瞬、眠っていたらしい。頭が傾きかけたところで、シルバーアッシュは目を覚ました。 目の前に、向かい合うようにして座ったドクターがいる。ゆるやかに上下する…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
こういう仕事をしている時の常として、業務期間を自由にできないのは仕方のないことだ。依頼があればいつであれ飛び込む。勿論俺に断る自由はあるのだが、それが女の子に…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
すっ転ぶようにして、マンションのエントランスに駆け込んでいく男の背中を俺は追いかけた。持ち逃げした封筒でスーツの尻ポケットをパンパンにした、なんとも情けない後…
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この部屋には何もない6
弟は嘘の思い出話を作り上げるのが得意だった。全く自然な口ぶりで、あったわけもないことを話し、時々私もそれに騙されそうになった。 例えば、「子供の頃の俺は全然も…
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この部屋には何もない5
珍しく、弟がカードゲームに誘ってきた。弟が選んだのは神経衰弱だった。私が割と好きなゲームだ。チェスやらオセロのような、頭を使う遊びは好きじゃない。半分くらいは…
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この部屋には何もない4
私は気が利かない性格をしているうえに、他人よりぼんやりしているので、将来職を得ることができるのだろうかと母親だけでなく私自身も心配していた。しかし絵の才能に恵…
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この部屋には何もない3
私は生まれた時からずっとまっすぐな髪をしていた。大人になった今は、さすがに幾らかの傷みが毛先に出ているけれども、以前は櫛で髪をとかしている時にひっかかるなんて…