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らんゆか(東方)
廃墟の奥へ進もうとした紫の足元に、行く手を阻むようにして長針が突き刺さった。大陸でよく見かけるような、人の前腕ほどの長さのあるものだ。彼女はどこか興味深そうに…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
こういう仕事をしている時の常として、業務期間を自由にできないのは仕方のないことだ。依頼があればいつであれ飛び込む。勿論俺に断る自由はあるのだが、それが女の子に…
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毒美(サイコダイバーシリーズ)
すっ転ぶようにして、マンションのエントランスに駆け込んでいく男の背中を俺は追いかけた。持ち逃げした封筒でスーツの尻ポケットをパンパンにした、なんとも情けない後…
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この部屋には何もない6
弟は嘘の思い出話を作り上げるのが得意だった。全く自然な口ぶりで、あったわけもないことを話し、時々私もそれに騙されそうになった。 例えば、「子供の頃の俺は全然も…
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この部屋には何もない5
珍しく、弟がカードゲームに誘ってきた。弟が選んだのは神経衰弱だった。私が割と好きなゲームだ。チェスやらオセロのような、頭を使う遊びは好きじゃない。半分くらいは…
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この部屋には何もない4
私は気が利かない性格をしているうえに、他人よりぼんやりしているので、将来職を得ることができるのだろうかと母親だけでなく私自身も心配していた。しかし絵の才能に恵…
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この部屋には何もない3
私は生まれた時からずっとまっすぐな髪をしていた。大人になった今は、さすがに幾らかの傷みが毛先に出ているけれども、以前は櫛で髪をとかしている時にひっかかるなんて…
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この部屋には何もない2
弟は学校をサボりがちで、登校している日の方が少ないくらいだった。堂々と朝から家に居座っている日もあれば、制服を着てちゃんと登校したのかと思わせてそこらをぶらつ…
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この部屋には何もない1
「姉さまは自分の顔の良さに甘えてるよね」 ある日弟がそう言ってきた。「世の中には太る自由さえない顔をしているのがいっぱい居るんだよ。ちょっと顔に肉がついただけで…
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文美(サイコダイバーシリーズ)
「セーフーワードを決めさせてくれ」深夜、ベッドの上で文成が突然言い出したことに美空は「はあ」とだけ返事をした。文成はボクサーパンツだけ身につけた姿で、シーツの上…