スマホが普及した結果、若者の間で脳の報酬系作用が低下しているらしい。供給過多な情報、刺激の強いコンテンツ、ゲームや動画といった娯楽などに、いつでもどこでも手軽に浸れるようになったことが原因で、これらに触れる時間が長すぎると、脳がドーパミン報酬系への刺激に慣れすぎて、今以上の刺激を求めて延々とSNSを巡回したり、仕事や家事に対して無気力になったり……という感じで、日常生活にも支障をきたしてしまうとか。
スマホ時代の今、こんな感じの注意喚起はネットを巡回していれば誰でも一度や二度は目にするだろう。
自分もなるほどなぁ……と少し思っていて、例えばTwitterで可愛いイラストが流れてくると、「おっ可愛い~!」と思いながらいいねを押すけれど、スマホが普及する前であれば、同じイラストを見ても「うおおおおお!可愛い~~~~!」くらいの興奮は得られていたんじゃないだろうか……とたまに思うのだ。
感情は数値化できるものじゃないので、単に私がそう思い込んでるだけの可能性もあるし、そもそもスマホ依存関係なく、「老い」によって私自身の感受性が低くなってしまった可能性だってある。
個人的には、Twitterでおすすめ機能が実装されてからこの感覚が加速していったなと思っていて、「おすすめに炎上事についてばっかり流れてくる😡 もう絶対に見ないからな!😤」と意気込んでも、タイムラインの動きが無いと、ついつい刺激を求めて可愛いイラストなんかを探しにおすすめ欄を覗いてしまう。一つ美少女イラストをいいねすると、次々色んな美少女イラストが流れてくるので、ウヒョ~~~!となりながら眺めてしまうのだ。
このおすすめ欄のように、一つのツイートをいいねしたら、似たようなジャンルのツイートが自動的に流れてくる仕組みを「リコメンド」というらしい。
私は最近までTwitterでしかこの機能を知らなかったのだが、作画資料探しに始めてみたピンタレストでも同様の機能が実装されていた。ピンタレストはTwitter以上にこちらのデータを詳細に読み取ってくれるらしく、例えば東方の霊夢ちゃんのイラストを一つ保存すると、霊夢ちゃんの画像ばかり十も二十も流れてくるようになる。
私は利用するネット上のサービスはあまり増やさない主義なのだが、そうでない人はTwitterとピンタレスト以外でもこのリコメンド機能の恩恵を受けているのかもしれない。自分から検索したりネットの海を探索しなくても、受動的に自分好みのイラストや動画が無限に流れてくる。たしかに脳みそのどこかしらが麻痺してしまいそうな便利さだ。
自分はひねくれた子供だったので、「ゲームをやると馬鹿になる」みたいな言葉を親世代から聞くたびに「またまた~笑」と流していたタイプだったのだが、このドーパミン中毒についてはうっすらと危機感を抱きつつあり、デジタルデトックスとか、した方がええんやろうか……と考えていた。
そんな時、ふっと胸に残ったのがソーシャルゲーム「魔法使いの約束」のこの台詞だった。


ほら、世の中には情報が多いだろ。
ハイウェイを走ってるだけで、無数の情報が目や耳から飛び込んでくる。
文字、光、映像、音、匂い、味も。
たいていは、情報が飛び込んできてもすぐに忘れちまう。
頭がパンクしちまうからさ。
でも、忘れないものがある。
それがきっと好きだよ。
この台詞がウオオオオオ!と強く印象に残った。
これは四月一日に実装された、いわゆる「ソシャゲあるある」なエイプリルフール用のイベント、「パラドックス・ロイド」である。エイプリルフールイベントといえば、大抵はそのソシャゲのキャラたちが本編とは別の役柄や名前を持って活躍するものとなっているが、このパラドックス・ロイドもそんな風にして、ファンタジー世界が舞台なまほやく本編と違い、近未来のお話となっている。
パラドックス・ロイドは私たちの世界より情報社会が進んでいるらしく、空中や壁面にさえ、ネオンライトで作られた沢山のコマーシャルがひっきりなしに流れている。音と光だけでなく、味や匂いまで感じられるほどらしく、(上述したハイウェイを走ってるだけで~はこれを指している)その情報量の多さは現代と比べ物にならないだろう。そんな世界で生きているキャラに、こうもさらっと断言されたのが、なんだか胸を打ったのだ。
自分はまほやくのテキストが好きで、それは下地にキャラの関係性や世界観があるからだろうな~と思っていたのだが、このストーリーではキャラ同士が出会って間もない時点でお出しされた台詞なため、オデってまほやくのテキストそのものが好きなんだな……と実感できた場面でもある。
この台詞を経て、実生活で何か変化は起きたのかというと……特に何もなかった。しかしおすすめ欄に無数に流れてくるイラストの一つをいいねする際、「私は大量のイラスト群の中で、この絵を特に好きだと思っていいねしたんや!」と意識しながらするようになった。SNSのいいねって、ワンタップでできるから軽く見がちな行為だったけれど、「好き」だと思ったものにアクションできるって、その手軽さに見合わずなかなか良いものだと思う。数字として相手に伝わるし、「自分はこれが好きなんだ・後で見返したいと思っているんだ」と意識しながらできるアクションって自分の「好き」を顕在化するのにいいことのはずだ。
風呂にスマホを持ちこまないとか、通知をオフにするとかドーパミン中毒に対してもっとできることはたくさんあるだろ……という声が聞こえてきそうだが、ネット巡回中の罪悪感は薄れたのでこれで良しとする。インターネットのある時代って素晴らしい! 今日も各SNSとブックマークを巡回します☺