「タークス~ザ・キッズ・アー・オールライト~」好きなシーンまとめ

FF7の公式外伝小説、「ファイナルファンタジーⅦ外伝 タークス~ザ・キッズ・アー・オールライト~」を読んで以前感想を書きました。
お気に入りシーンまとめが小説前半で終わっていたので、中盤~後半部分をここから書いていきます。
好きなシーンをどんどん抜粋していったら膨大な量になってしまったので、タークスが登場しているシーンのみに絞りました。

前半部分の感想はこちらの記事をどうぞ↓

レノがおれを睨んでいた。そのレノを真っ直ぐ見つめながら近づいた。
「やあ」
「──伝言、聞かなかったのか」
「聞いた」
「だったらよう、てめえ」
「聞いたから、謝りに来たんだ。昨日は悪かった。でも、兄貴が──」兄貴だと? 「ああしろって言ったんだ」
レノはポカンと口を開けておれを見た。やがて顔いっぱいに笑みが広がる。
「やっぱりな! そうだろ! おかしいと思ったんだよ。だってよ、社長は銃を持ってたはずだからな」
楽しそうに話すレノを見て、ルーファウス神羅を兄貴と呼んだことへの罪悪感が深まる。
「とにかく、信じてくれたのに裏切ってごめん。それを言いたくて」
「もういいって。で、どうだったんだよ。兄弟の対面は」
「まだピンと来ない」
「そうか。ま、そんなもんか。でもよ、たまには会いに行けよ。そうすれば、いろいろとわかりあえるってもんだ」

社長を人質に取った翌日、レノとエヴァンが再会したシーン。咄嗟にその場しのぎの嘘をつくのがエヴァンの悪い癖ですが、ここではうまい具合に切り抜けられてます。エヴァンって「兄貴」とか言うんだ……という驚きがあった。FF7のキャラって、顔面は耽美系でも口調はナチュラル男の子してるのが多くて楽しい。あのセフィロスも狂う前は「おじょうさん」って言ってたタイプやしね(あの顔面で…)そして嘘を信じ切っているレノが可愛い。まあ実際ルーファウスがあの行動を引き出したので、半分当たっているようなものだしね。社長とその弟の再会自体も嬉しいけど、「肉親に再会できると嬉しいはず」というタークスでは珍しいこの価値観が肯定されたみたいでレノには嬉しいんだろうなあ。

「あいつは──危なっかしいな」
「あん?」
訊き返しはしたが、意味は分かっていた。地に足がついてない行動。自分を大きく見せたい。虚栄。小心者のくせに大胆な行動で周囲を驚かせる。そんなことを繰り返すうちに、実にくだらない理由で死ぬ。若いタークス、新米ソルジャーから兵士まで、ふたりはエヴァンのような若者を何人も知っていた。
「でもよ、若いってのはそうだろ? おれたちにもあったじゃねえか、そういう時代がよ」
「忘れた」
(中略)
「でもよう、社長の弟じゃほっとけねえだろ?」
ルードは答えず、そのまま作業を続けた。
「おれはこれで気が済んだ。もう、あいつらとは関わりたくない」
「──そうもいかないみたいだぞ、と」
広場を突っ切って向かってくるキリエの姿が見えた。

エヴァンについて語るレノとルード。おいおい言いすぎだろ! と感想記事で散々にエヴァンの性格を罵っていた自分でさえ思う辛辣な評価だ……。しかし「おれたちにもあったじゃねえか、そういう時代がよ」というレノの台詞は、レノの愛情深さや二人が重ねてきた年月を感じさせていいですわね~。

神羅カンパニーが所有しているヘリの数を把握している者は誰もいなかった。「メテオ以降」の最初の半年で大部分が略奪されていた。結局、紆余曲折を経て、ルーファウス神羅とタークスが確保できたのは三機だけだった。多くはないが、メンテナンスにかかる手間を考えると、妥当な数ではあった。ヘリは、ヒーリンの近くに一機、ミッドガルに二機、隠してあった。

ウオオオ~なんかこういうキャラクターとはまた別の細かい設定が明かされるとめっちゃ嬉しくなる……。特にメンテナンスにかかる手間を~あたりのリアリティある設定が付加されることで、その世界で生きてる感が出てきて良い……。

「スターターの不調だ。とりあえず二号機のと交換しておいた」
ルードが手に付いたオイルをボロ布で拭いながら言った。
「二号機はいつ飛べるようになる?」
ツォンが聞いた。
「さあ、一号機から外したパーツを確認して、それを確認しないと──」
「急いだほうがいいな」
ツォンが口の端を歪ませる。
「主任。いま、ニヤッとしたのはなんだ?」

「飛んで、どこへ行くんだ? ここんとこ、隠し事してるだろ、主任」
「ジェノバを探しに行く」
ツォンの言葉に、レノとルードは顔を見合わせる。
「そりゃすげえ!」
「まず、わたしとイリーナで、あちこちに散らばる仲間に会いに行く。情報収集を依頼してあるからな」
イリーナが後ろめたそうに視線を逸らす。
「お、おれたちにもやらせてくれよ。やっぱり、タークスはそういう仕事がいい。総務部調査課タークス!」
「慰霊碑はどうだ?」
「あと二日で終わる!」
「いや、五日はかかる」
ルードが冷静に訂正した。
「なんとか四日でやる!」
レノが食い下がる。

機械の修理に強いルード、ニヤッとする主任、こういう仕事をやりたくて仕方がないタークスたちという、見どころたっぷりなシーン。主任は普段人間臭さがない分、ちょっとニヤッてするだけでもサービスシーンみたいに思えて嬉しい。
やっぱり、タークスはそういう仕事がいい。総務部調査課タークス!」→ここ初見時かなり衝撃を受けたというか、タークスたちが本当に自分たちの仕事を楽しんでるのが分かって嬉しかったんですよね。感想記事でも書きましたが、彼らがどういうスタンスで仕事にあたっているのかよく分かってなくて、「暗殺や虐殺も含んだ、精神的につらい仕事だからこそ、矜持を持って遂行している」タイプなのかと思っていました。オデはね、オデの好きなキャラたちが、毎日楽しそうに過ごしているのを見るのが好きなんだ……。
あと小説序盤で「この仕事について教えたら、慰霊碑の仕事がおろそかになりそうだからレノたちに教えるのは後にしましょう」的に主任が言ってたんだけど、本当にそういう反応をしていて草なんだ。主任にはすべてお見通しなんやね……。

「あんたよ、こんな仕事してたのか? ずいぶん慣れてるよな」
「都市整備部にいた」
「なんだよ、神羅の同僚かよ!」
ドイルは視線をボランティアたちに送りながら、さあ、と曖昧な返事をした。
「チッ、汚れ仕事と一緒にするなってか?」
タークスから距離を置こうとする部署は少なくなかった。
「まあ、最近は見直しているよ」ドイルはレノを見据える。「あんたたちがしていることは、悪いことじゃない」
レノは思わず目をそらす。仲間以外からの肯定は、居心地が悪い。

タークスから距離を置こうとする部署は少なくなかった~という記述が印象的な部分。タークスって、どこかの解説サイトで「表向きは、社長や社員のボディーガード、ソルジャーの素質のある者の探索、デスクワークなどを任務としている」とあったので、社員の大多数にはそういう単なる一部署だと思われてるのかな~とずっと思ってたんですが、意外とその異質性が知れ渡ってるんだな……と思いました。「ソルジャー」という大々的な名称がつけられてヒーロー的に崇められてるセフィロスたちと違って、「総務部調査課」な彼らは表向きには暗部的な仕事を隠してるものかと……。小説序盤でも一般市民のエヴァンにでさえ「いい子にしてないとタークスが来るぞ」という脅し文句が認知されてるので、むしろ怪談並みに有名やん……となった。

「薬と、この慰霊碑が第一歩だ。見てろ、すぐってわけにはいかないけど、神羅は復活するぞ。いや、復活させてみせる」
ここのところ、漠然と考えていることだったが、部外者に話すのは初めてだった。
「何をする気だ?」
ドイルが眉をひそめる。不用意に口に出したことをレノは後悔する。
「そりゃ言えねえ」
「だろうな。しかし、社長に伝えておけ。もう誰も暴力には屈しないとな」
「覚えていれば伝えるけどよ。なあ、ドイル先生。社長の居場所──いや、生きてることも誰にも言うなよ。まだ体調が万全じゃない。未だに恨んでる奴もいるから、面倒は避けたいんだ」
「言ったら、どうする」
「タークスの仕事が増える」

タークスの仕事が増える」このたった一文に余韻があっていい……。

「エヴァンを追ってきたとは?」
そう言ったツォンの眉間にできた皺にイリーナは気づいた。滅多なことでは表情を変えない上司の、この様子。これは大事件が起こったに違いないと耳を澄まし、電話から漏れるレノの声を聞き取ろうとした。

眉間に皺ができる事さえ普段はないツォンさん、めちゃくちゃポーカーフェイスだ。ここらへん見るたびに、公式的に人間味が薄いのは社長より主任の方なんだろうなあ……と思う(リメイク版の再構築されたキャラだと分からないけど)

ツォンは、気まずそうに離れようとするキリエの両肩を掴む。
「あの、カタージュを名乗った少年は──」ツォンは告げる。「人間ではない。怪物だ」
告げるべきか否か。確信はなかった。しかし、この娘の信頼を得る必要があった。タークスに対する依存心を植え付けなくてはならない。

「しかし、この娘の信頼を得る必要があった。タークスに対する依存心を植え付けなくてはならない。」←ここめっちゃウオオオ~~!!って滾ったんですけど分かりますか? 「信頼を得たいから誠実に振る舞う」のではなく「目的のための手段として信頼を得ようとする」みたいな部分、個人的にかなりヘキなんですよね。傍目からは誠実な振る舞いに見えるけど、実際には他者をコントロールしたいとか後ろ暗い理由あっての行動なところがね。「依存心」というワードをツォンさんが脳内で選択しているのもベネ。

ツォンには、キリエが、一連の体験と情報を、どう処理したのか、まったく理解できなかった。若い娘のコントロールは難しい。部下のイリーナですら、時々、わからなくなる。

若い女の子の思考回路が理解できないツォンさん、萌え。イリーナにさえ同じ印象を抱いてるのも面白い。読んでる限りだと「狂犬と飼い主」みたいに、いい感じにイリーナの手綱を握ってコントロールしてるように見えてたので意外だ。

ヘリから離れたツォンは、携帯電話を手に取り、暗記している一連の番号を打ち込んだ。メモリーには登録しないよう、部下たちにも命じていた。相手はすぐに出た(中略)ツォンが告げると、相手──ルーファウス神羅は、ただ、わかったと応えた。

電話帳に社長の情報を残さないようにしているタークス、裏家業のプロ意識を感じられていい。多分だけど通話履歴とかもすぐ消してるんだろうな……。こういう部分にキャラのリアリティが感じられてすき。

相変わらず、痛みはなかった。念のために軽い薬をもらい、飲んでおいた。ツォンが持っていたケースには何種類もの薬が入っていて、効き目は多種多様らしい。どうしても耐えられない場合は気を失わせる薬もあると言っていた。そんなものの世話にはなりたくはない。

こういうリアリティある描写が(略)気絶したくなるほど耐えられない痛み、を想定しているのが怖い。任務中にそういうのが何度もあったんだろうな。

「ツォンさん、いまのうちに眠っていてください。わたしが監視してますから。こんな吹雪の、しかも夜中に動かないですよ、あいつら」
「いや、わたしが聞いていよう。先に休め」
「ツォンさんに寝顔見られちゃうの恥ずかしいですよぉ」
ツォンは部下の言葉を無視して窓辺に近づいた。

イリーナちゃんに冷めた対応をするツォンさんに草なんだ。これ見る限り、イリーナちゃんからの矢印に気付いてないんじゃなくて、分かってて無視してるんかな。
リメイク版で、「タークスは恋愛禁止」ってイリーナちゃんが言ってて、しかし社長がそんなこと言うか? 神羅全体でそんな規則なわけなさそうだしな……と思ってたんだけど、ツォンさんが勝手にイリーナにだけ言ってる可能性めちゃあるよなと思ったんですよ。イリーナ自体や恋愛感情そのものが煩わしいのではなく、「タークスとして動くためには不要」と思っての振る舞いだろうなと思うので、恋愛成就の可能性はゼロではないだろうし、イリーナちゃんには頑張ってほしいですわね……。

「ツォンさん!」
「わたしは大丈夫だ。エヴァンに薬をやってくれ」
「はい」
イリーナはしゃがみこむとベルトのホルダーからガス式の注射器を取り出し、エヴァンの首筋に押し付ける。高濃縮ポーションが体内に送り込まれる手ごたえがあった。

ウオオオオ~~~~イリーナちゃんがこういう裏家業に慣れてそうな振る舞いをするたびに滾ってしまう……。イリーナちゃん、エアリスやティファと比べるとそりゃキリっとしてるんですけど、やはり男所帯の中で見ると一人だけ女の子で華奢で小柄で可憐で……という出で立ちなので、タークスらしい描写があるとギャップありすぎて嬉しくなってしまう。あとベルトホルダーに回復ポーション下げてるって描写、いいよね。

「ミサイルを使う」
「エヴァンがいますけど──」
「──構わん」
「でも、社長の弟なんですよね? ほら、わたし撃っちゃったじゃないですか。だからクビになるんじゃないかとビクビクして──」
「構わんと言ったのが聞こえなかったのか?」

構わんと言ったのが聞こえなかったのか?」←好(ハオ)だ……。

「あのバカ」
レノは呟く。
「どうした? 撃て!」
スピーカーからツォンの声が響く。
「エヴァンがいる」
ルードがレノを代弁する」
「構わん。もう死んでいる。撃て」
ツォンの声にドイルとレズリーは顔を見合わせる。
「できねえぞ、と」
「レノ」
ツォンの叱責が響く。
「あいつ、ダチだからよ」
「わかった。手短に経緯を説明し──」
ツォンの言葉が途切れる。
「故障だ」
ルードが無線機のマスタースイッチから手を離しながら呟く。

任務遂行のために「もう死んでいる」と嘘をつくツォンさん、義理堅いレノ、身内に甘いルード、好(ハオ)シーンが詰まった部分だ。
レノ、ダチとは言ってもそう長く付き合ったわけでもない、道中被疑者扱いにもなった相手にでさえこうも情をかけてしまうんだから、よく原作でプレート落としなんてできたな……と思った。そしてレノのために上司の命令に背くルードもいい。ていうかレノの起こすアクシデントって、レノ自身の感情によるものが発端だとしても、こうやってルードが助長させるせいで起こっちゃってることありそう。レノ&ルードコンビをツォンさんがコントロールできなくなる時って、絶対こうやってルードも共犯になってるんだろうなあ……

「イリーナ、単独でやる。機首を安定させろ」
「──はい」
「おまえもエヴァンの友人なのか?」
ツォンはイリーナの声に含まれた躊躇を聞き逃さない。
「──違いますけど、レノさんが──」
「操縦システムを切り替える。わたしがやろう」
「やります! わたしが操縦します!」

先ほどからツォン&イリーナコンビの引用をめっちゃしてますが、この小説の素晴らしいところってこの二人とやり取りをいっぱい見せてくれるところにあると思うんですよ。無印や外伝含めても、設定のわりに実際に絡んでるシーンが少ないんですよね。自分もこの小説でようやく二人の距離感が掴めてきた感じがする。ツォンさんに失望されたくないイリーナちゃんかわいいね……。

「どうするつもりだ?」
複座の操縦席に戻っていたレノが聞いた。
「ツォンさんは、やるだろうな」
「ちがうって、相棒。あんただよ」
「おれはエヴァンが嫌いだ」
「知ってるぞ、と」
「だが、キリエは嫌いじゃない」

レノとルードの問答シーン。ここのルードの返しが良すぎてウオオオってなる。小説内で散々エヴァンに肩入れしようとするレノへ気のない返事をしてきたルードが、ここにきてこの返答してくれるのがアツいんですわ……。

「あのガキんちょが敵ってか?」
「二年くらい前から、敵はたいていガキだ」
「ちがいねえ」

本編を知ってるプレイヤーがニヤッとしてしまう台詞。クラウドはそりゃガキだよなあリメイク版で28・30歳設定されてる二人から見れば……。

「ユージン先生、話してくれて良かったよ」
ツォンが抑揚のない声で言った。おれはリノリウムの床を見つめながら、このまま帰るわけにはいかない、しかし、どうしてくれようなどと考えていた。その時、ガラスや金属がぶつかり合い、割れるけたたましい音がした。顔を挙げると、医者が椅子から崩れ落ちるところだった。ツォンが殴ったか何かしたらしい。
「な、何を──」
医者の怯えた声がした。その後、ツォンの靴が人間の身体に食い込む鈍い音がした。何度も、何度も、低いうめき声が聞こえた。そして、その苦しげな声に、おれは、喜びを感じていることに気付いた。背筋がゾッとした。ここはおれがいるべき世界ではない。母さんが信じた世界ではない。もういい。止めてくれ。ツォンの背中に、おれは叫んだ。
「ルードに送らせる。出ていけ」(中略)
おれは、医者の命乞いを背中で聞きながら診療所を出た。

詐欺行為を働いた医者にツォンが暴力をふるうシーン。これまでツォンが実際に殴ったり蹴ったりする場面がほぼ無い中でようやく描写されたのがここなの本当に好き。
ここはツォン自身が医者への許せなさから感情的に暴力をふるったのもあるだろうし、エヴァン当人が医者に抱いただろう憎しみを代わりに発散してあげた感もある。リメイクでわざと部下に嫌な発言をして憎まれ役を買って、レノ・ルードからプレート落としの罪悪感を逸らしてあげたのと同じような感じでね。
そしてここで「もっとやれ」と思うわけでもなく「ここはおれがいるべき世界ではない」「母さんが信じた世界ではない」と思えるエヴァンはやはり善性寄りの人間なんだなと思ったよ。母親の仇みたいなものなのに。一瞬喜びを感じたとしても、意思の力でそれをいけないと思える。それをできない人間が、FF7本編にはいっぱいいるので。
そしてツォンさんが「帰りなさい」とか「帰れ」ではなく「出ていけ」と言ったのが本当に好き。ヤクザメンタルが漏れ出てますわよ。表面は紳士的なビジネスマンとして振る舞っているけど、感情が出るとやっぱこういう口調になるんだろうね。

「──あのね、レノとルードが初めてあなたのところへ来た日って、誕生日だったでしょ?」
「ああ」
「わたし、ちゃんと覚えていたのに、いろいろあって、おめでとうも言えなかった。だから、あらためて、パーティーなんかできたらなって」
「それにタークスを呼ぶつもりだった?」
「タークスっていうか、お兄さん。エヴァンの」
「──そんなこと、よく思いついたな、キリエ」
「レノ、喜んでたよ。それから、折り返し、電話が来たの。なんと、お兄さん本人から」
「お兄さんって、やめろよ。ピンと来ない。で、なんだって?」
「面倒だから、欠席だって」
「だろうな」
「でね、こう言ってた。うらやましくなんかないからな、だって。どういう意味かな」
腹がひくひくして、笑いが込み上げてきた。そのうち、会いに行くのもいいかもしれない──と、おれは思った。

感想の中に引用するか、ちょっとだけ迷った部分。だって正真正銘のエピローグみたいな部分なので……。しかしお気に入りのシーンなので結局取り上げました。
エヴァンとキリエ(ヒロイン)の会話シーン。ルーファウスの、中盤の人質シーンを踏まえたうえでのこの台詞、ほんまに物語の〆としていいんですよね……。なんというか、エヴァンがいくつもの出来事を経たうえで変われたというのが感じられて。
そしてルーファウス側も、「面倒だから欠席」しながらもこういった言葉を寄こしてくるというのが、いかにもルーファウスという距離感でベネ。エヴァンとキリエ二人きりの中で、これから広がっていくだろう人間関係や物語を思わせる終わり方なのが、素晴らしい読後感を与えてくれました。

というわけで、「ファイナルファンタジーⅦ外伝 タークス~ザ・キッズ・アー・オールライト~」のお気に入りシーンまとめは終わりです。
読んでいて本当に楽しかった……。転職してから、小説をしっかり読む機会が減った中での読書体験だったのですが、バリバリ読み漁っていた中学生時代に戻れたような楽しい時間を過ごせました。やっぱり小説って楽しいね。


小説としてはかなりドライというか淡泊な文体というレビューが多く、そこがFF7の世界観にかなりマッチしてるな~と思いました。あまり感傷的すぎる文体だと、悲劇的なシーンで読者が耐えられなくなっちゃうからね……そこが素晴らしい塩梅だったと思います。
唯一の不満点としては、あとがきが無かったことくらい? 電子版で読んだので収録されてないだけなんだろうか……? 自分はそこまであとがきが好きでも嫌いでもない性質だと思ってたんですが、エンドマーク後に何もなかったのを見た瞬間にちょっとだけ物足りなさを感じてしまった。この小説を書き終わった時の気持ちとかFF7自体への言及とか見てみたかった~~~。しかし逆に言えばそこ以外に本当に不満点はなかったです。良作すぎる。
引用部分で少しでもムムッ!と思うシーンがあればぜひ読んでみてください。
というわけで、感想記事おわり。読んでくださってありがとうございました!